8. 詩篇におけるダビデの源泉的位置とその根拠
Ⅰ 序説
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8. 詩篇におけるダビデの源泉的位置とその根拠
(1) ダビデの源泉的位置
①詩篇の表題によれば、73の詩篇がダビデの作となっている。その他、アサフが12回、コラの子たちが11回。ソロモンは2回、ヘマン、エタンがそれぞれ1回、モーセも1回、それに「みなしご」詩篇がある。このように圧倒的にダビデの作が多いが、これらすべてがダビデのものであるかどうか明らかではない。しかし詩篇においてダビデがその源泉的位置を持っていることは確かである。
②「ダビデによる」とは、文字通りダビデ自身の作であると理解し得るとともに、文法的に「ダビデに献上された」「ダビデについての」「ダビデを偲んで」「ダビデの指示によって」とも理解し得る。
③ユダヤ人の『タルムード』では、モーセ以後のすべての律法はモーセの定めたものとされ、知恵文学はソロモンの作というように、詩篇のすべてもダビデの作であるとされている。
④新約聖書において詩篇が引用されるときには、当然ダビデの作であるという自明の前提に立って引用されている。例) マタイ22章43節、ルカ20章42節、・・。
(2) その根拠
①ダビデは琴を奏でる音楽家であった(Ⅰサムエル16章18~23節、18章10節)。
②ダビデは詩人であった(Ⅰサムエル22章=詩篇18篇ははっきりとダビデが歌ったもの)
③ダビデはダビデの幕屋で祭司とレビ人による聖歌隊を任命し、歌をもって神を賛美する礼拝を導入した責任者。そのダビデは聖歌隊のリーダーとしてアサフ、ヘマン、エタン(エドトン)を任命した(Ⅰ歴代誌16:6)。
④神によって王として選ばれ、油注がれた王である。
⑤にもかかわらず、サウロ王の妬みによって、人生の様々な苦難を経験したこと。
⑥その苦難の経験によって、人間性の深みを経験し得たこと。
⑦苦境において神を恐れることを学んだこと
⑧主の臨在を何よりも第一に求め続けた礼拝者であること(詩篇16篇、27篇)。
⑨王として永遠の契約を与えられた神のしもべであること。
⑩ダビデの根であるメシア(イエス・キリスト)を指向していること。