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第六の幻

第六と第七の幻:「飛んでいる巻き物」と「エパ升の中にいる女」

【聖書箇所】ゼカリヤ書5章1~4節/5~11節

ベレーシート

●ゼカリヤが見たこれまでの五つの幻(1:7~4:14)によって、神はヨシュア、ゼルバベル、そして民に慰めと励ましのことばを与えられました。そして大祭司ヨシュアと総督ゼルバベルの下で神殿再建を成し遂げることを励ましました。最初の五つの幻は積極的ですが、これから後の三つの幻(5:1~6:8)は消極的で、否定的です。というのも、民の邪悪さと地上の邪悪さがさばかれているからです。この部分はヨハネの黙示録18章を彷彿とさせます。

●ゼカリヤ書5章には二つの幻が記されています。ひとつは「空を飛ぶ巻き物」の第六の幻、もうひとつは「エパ升とその中にいる女」の第七の幻です。いずれにしても、ゼカリヤが見せられる幻はすべて神殿再建と神の民の回復の視点から、つまり終末論的視点から解釈される必要があります。

●3章のサタンに訴えられている大祭司ヨシュア、4章の神殿のかしら石を運ぶゼルバベルの二人はいずれも指導的立場にある者でしたが、5章では一般のイスラエルの民に対するものです。二つの幻を通して果たして何が見えてくるでしょうか。その二つの幻を順に見て行きたいと思います。

1. 第六の幻:「飛んでいる巻物」(1~4節)

【新改訳2017】ゼカリヤ書5章1~4節
1 私が再び目を上げて見ると、なんと、一つの巻物が飛んでいた。
2 御使いは私に言った。「あなたは何を見ているのか。」
私は答えた。「飛んでいる巻物を見ています。その長さは二十キュビト、幅は十キュビトです。」
3 すると彼は私に言った。「これは全地の面に出て行くのろいだ。盗む者はみな、一方の面に照らし合わせて取り除かれ、また、偽って誓う者はみな、もう一方の面に照らし合わせて取り除かれる。」
4 「わたしがそれを送り出す。──万軍の【主】のことば──それは盗人の家に、また、わたしの名によって偽りの誓いを立てる者の家に入り、その家の真ん中にとどまって、その家を梁と石とともに絶ち滅ぼす。」

●この巻き物のサイズは長さ20キュビト、幅10キュビト。1キュビトを45cmとすれば、長さ9m、幅4.5mになります。「巻き物」と訳された原語はここでは「メギッラー」(מְגִלָּה)で女性名詞です。ゼカリヤ書では2回(5:1, 2)ですが、エレミヤ書36章にはなんと13回も使われています。「巻き物」とは神のトーラーです。羊の皮に記された巨大な「巻き物」は、おそらく、そこに記されていることがだれの目にも明らかにされることを意味していると考えられます。特に、御使いが「これは全地の面に出て行くのろいだ」と言っています。つまり、神の教えによって生きていない者は、「巻き物」(トーラー)によってさばかれることを意味しています。これは、黙示録5章とリンクします。

【新改訳2017】ヨハネの黙示録5章1~7節
1 また私は、御座に着いておられる方の右の手に巻物を見た。それは内側にも外側にも字が書かれていて、七つの封印で封じられていた。
2 また私は、一人の強い御使いが「巻物を開き、封印を解くのにふさわしい者はだれか」と大声で告げているのを見た。
3 しかし、天でも地でも地の下でも、だれ一人その巻物を開くことのできる者、見ることのできる者はいなかった。
4 私は激しく泣いた。その巻物を開くにも、見るにも、ふさわしい者がだれも見つからなかったからである。
5 すると、長老の一人が私に言った。「泣いてはいけません。ご覧なさい。ユダ族から出た獅子、ダビデの根が勝利したので、彼がその巻物を開き、七つの封印を解くことができます。」
6 また私は、御座と四つの生き物の真ん中、長老たちの真ん中に、屠られた姿で子羊が立っているのを見た。それは七つの角と七つの目を持っていた。その目は、全地に遣わされた神の七つの御霊であった。
7 子羊は来て、御座に着いておられる方の右の手から巻物を受け取った。

●黙示録6章1節からは、内側にも外側にも字が書かれている巻物の七つの封印が解かれるごとに、さばきが放たれ、地から神に反逆する者(白い馬)、不当に権力を行使する者(赤い馬)、邪悪な者(青ざめた馬)が取り除かれ、再臨のメシアの支配が始まる前に、すべての汚れのきよめがなされることが預言されています。

●ゼカリヤ書に戻ります。「全地」とは、神の神殿を建てるために帰還した民たちが住んでいる場所のことです。その地の上を、のろいのことばが飛んでいるのです。しかもそれが盗人の家に、偽りの誓いをする者の家に入り、その家の真ん中にとどまり、その家を梁と石とともに絶ち滅ぼそうとしているのです。「盗み」は貪欲とむさぼりから来ます。すべての者は貪欲であり、むさぼりに満ちています。特に商業は、むさぼり、欺き、金銭に対する愛が横行します。神殿の再建と神の民の回復とは車の両輪です。神の民の回復のための神の常套手段は、彼らが自分たちの罪によって招いた「のろい」を通して、罪の恐ろしさを知るようになることです。

●イェシュアがメシアとしてこの世に遣わされる前に、神はバプテスマのヨハネを遣わされました。ヨハネの語るメッセージは歯に衣着せぬ、人々が震え上がるほどのものでした。多くの者たちが悔い改めのバプテスマを受けたように、ヨハネの黙示録11章に突如登場する「二人の証人」の厳しいメッセージも同様です。メシアの再臨の前に神の民を主の前に整え、彼らを神に立ち返らせるためです。このように、神の教えは私たちにとって救いへの希望の書であると同時に、滅びへの警告の書でもあります。祝福とのろい、いのちと死とが記されています。主の御声、主のみこころに聞き従うならばもろもろの祝福が臨みますが、聞き従わないならばもろもろののろいがおよぶことを、ゼカリヤは第六の幻を通して示されたのです。

2. 第七の幻:「エパ升の中にいる女」

【新改訳2017】ゼカリヤ書5章5~11節
5 私と話していた御使いが出て来て、私に言った。「目を上げて、この出て行く物が何かを見よ。」
6 私が「これは何ですか」と尋ねると、彼は言った。「これは、出て行くエパ升だ。」さらに言った。「これは、全地にある彼らの目だ。」
7 見よ。鉛のふたが持ち上げられると、エパ升の中に一人の女が座っていた。
8 彼は、「これは邪悪そのものだ」と言って、その女をエパ升の中に閉じ込め、エパ升の口の上に鉛の重しを置いた。
9 それから、私が目を上げて見ると、なんと、二人の女が出て来た。その翼は風をはらんでいた。彼女たちには、こうのとりの翼のような翼があり、あのエパ升を地と天の間に持ち上げた。
10 私は、私と話していた御使いに尋ねた。「この人たちは、エパ升をどこへ持って行くのですか。」
11 彼は私に言った。「シンアルの地に、あの女のために神殿を建てるためだ。それが整うと、そこの台の上にその升を置くのだ。」

第七の幻は、以下の三つの部分からなっています。
(1) エパ升(5:5~6)
(2) エパ升の中の一人の女(5:7~8)
(3) こうのとりの翼のような翼をもった二人の女(5:9~11)

(1) エパ升

●ここでの「升」とはヘブル語の「エーファー」(אֵפָה)です。新改訳は「エパ」と表記しますが、新共同訳は「エファ」と表記します。穀物の分量を量る容器です。ルツ記では、ルツが朝から晩まで大麦の落ち穂拾いをして、その穂を打つと「一エパ」あったとあります(ルツ2:17)。Ⅰサムエル1章24節では、サムエルが乳離れした後に、母ハンナはサムエルを神にささげるために、子牛三頭と小麦粉一エパ・・・を携えてシロの宮に連れて行ったことが記されています。ちなみに、一エパは23リットルの分量です。

●ゼカリヤはここでも「これは何ですか」と尋ねています。すると御使いはその「エパ升」は「これは、全地にある彼らの目(=罪)だ」と答えます。ゼカリヤが見た「エパ升」はエルサレム周辺の人々の罪です。尋ねることがなければ、おそらくこの「エパ升」は全く理解できなかったに違いありません。帰還した民たちの間に、盗む罪がはびこり、分量を測る容器を小さくして、そのごまかした分を儲けていたのです。

【新改訳2017】ミカ書6章9~13節
9 【主】の御声がに向かって叫ぶ。──あなたの御名を恐れることは英知だ──「聞け、杖のことを。だれがその都を指定したのか。
10 まだ、悪しき者の家には、不正の財宝と、のろわれた升目不足の升があるではないか。
11 不正な秤と、欺きの重り石の袋を、誤りなしとすることが、わたしにできるだろうか。
12 富む者たちは不法で満ち、住民は偽りを言う。彼らの口の中で舌が欺く。
13 わたしも、あなたを打って痛めつけ、あなたの罪のゆえに荒れ果てるままにする。

●不正を働く商人たちが、不正な升を使って商売することが黙認されていました。不正な「エパ升」を使った罪は、ユダの「全地」にはびこっていました。これらすべての罪悪は「エパ升」の中にしっかりと押し込められて、翼のある「二人の女」によって所定の場所、つまり「シンアルの地」に移されることが告げられます。

(2) エパ升の中の一人の女(5:7~8)

●重い鉛のふたが持ち上げられると、このエパ升の中に一人の女が座っています。御使いは「これは邪悪そのものだ」と言って、再びその升の中に女を閉じ込めました。「エパ升」が象徴するのは「罪」で、その中にいる「女」が象徴するのが「罪悪」だとすれば、それは罪の中の罪、神が最も嫌う「偶像礼拝」そのものを意味します。

●「エパ升」も「女」もどちらも女性名詞です。聖書では罪の根源は「女性名詞」で表現されます。「姦淫」、および神への「背信」も女性名詞で表されるのです。これから再建しようとする神殿において、そうした罪は完全に除去されなければなりません。

(3) こうのとりの翼のような翼をもった二人の女(5:9~11)

●「こうのとりの翼のような翼をもった二人の女」が登場して、エパ升を地と天の間に持ち上げ、それを「シンアルの地」(=バビロン)へと運ぼうとしています。イスラエルの民が捕囚の地で学んだ商売における悪が、神の主権によって、イスラエルの地から運び去られることを意味しています。ゼカリヤ書五章の幻は、黙示録18章の大いなるバビロンの幻と一致しています。経済的繁栄における悪は偶像礼拝と淫行です。様々な経済的事業はマモンを愛する不品行な女なのです。

●黙示録18 章では「⼤バビロンのさばき」が記されています。「⼤淫婦」(黙17章)も「⼤バビロン」も同義で密接な関係を持っています。「⼤淫婦」も「バビロン」も単数⼥性名詞です。「バビロン」は「⼤きな都、⼒強い都」で、神を求めない⼈々が⾃分の欲望を満たすための場所となります。そのバビロンは倒れることが定まっているのです。黙示録18章2~3節にはバビロンの滅びの宣告が記されています。

【新改訳2017】ヨハネの黙示録18章2~3節
2 彼(=御使い)は力強い声で叫んだ。「倒れた。大バビロンは倒れた。それは、悪霊の住みか、あらゆる汚れた
霊の巣窟、あらゆる汚れた鳥の巣窟、あらゆる汚れた憎むべき獣の巣窟となった。
3 すべての国々の民は、御怒りを招く彼女の淫行のぶどう酒を飲み、地の王たちは彼女と淫らなことを行い、
地の商人たちは、彼女の過度のぜいたくによって富を得たからだ。」

●地上で最も邪悪なものは商売です。一見商売は何も悪くないように思えますが、実際は最も邪悪で、悪に満ちているということです。

ベアハリート

●第六の幻、第七の幻を通して何が見えてくるのでしょうか。注目すべき点はどこにあるでしょうか。それはバビロンから帰還した民たちの罪と悪です。と同時に、それらがイスラエルの民の中から完全に除き去られるということです。これがこの二つの幻の中心をなす事柄です。

神殿を再建しようとする民が、異教的な偶像礼拝から完全に断たれることです。しかもこうした悪からの覚醒は、終末におけるメシアの来臨(再臨)において不可欠なことなのです。良いことばかりを伝えるのではなく、全体的な神のご計画を脚色することなく、その全貌を正確に伝えるのが預言者の使命です。王なる祭司である私たちの責任でもあります。

●最後に、使徒ヨハネに告げられた御使いのことばを読んで終わりましょう。

【新改訳2017】ヨハネの黙示録10章8~11節
8 それから、前に天から聞こえた声が、再び私に語りかけた。「行って、海の上と地の上に立っている御使いの手にある、開かれた巻物を受け取りなさい。」
9 私はその御使いのところに行き、「私にその小さな巻物を下さい」と言った。すると彼は言った。「それを取って食べてしまいなさい。それはあなたの腹には苦いが、あなたの口には蜜のように甘い。」
10 そこで、私はその小さな巻物を御使いの手から受け取って食べた。口には蜜のように甘かったが、それを食べてしまうと、私の腹は苦くなった。
11 すると私はこう告げられた。「あなたはもう一度、多くの民族、国民、言語、王たちについて預言しなければならない。」


The 2nd Celebrate Sukkot集会Ⅶ 2023.10.4 (Wed/夜)
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