預言者ハナヌヤとの対決
エレミヤ書の目次
31. 預言者ハナヌヤとの対決
【聖書箇所】 28章1節~17節
ベレーシート
- エレミヤ書28章で初めて登場する人物、その人物の名は預言者「ハナヌヤ」です。ただし、「ハナヌヤ」と表記するのは新改訳聖書のみです。口語訳、岩波訳、関根訳では「ハナニヤ」、新共同訳では「ハナンヤ」で表記されます。ヘブル語表記の中央にある〔נְ〕をどう読むか、の違いなのですが・・・。
1. ハナヌヤとエレミヤとの対決
- 28章は27章の続きです。28章では同じベニヤミン族出身の二人の預言者同士(ギブオン出身のハナヌヤとアナトテ出身のエレミヤ)が、祭司や民たちの集まった主の家(神殿)で、真っ向から公言して対決します。それぞれが主の御告げだとして語る内容は以下の通りです。
預言者ハナヌヤ
主はバビロン王の軛を打ち砕く
二年のうちに、神殿から略奪された器具と捕囚された者たちを帰らせる。
預言者エレミヤ
バビロンの王に仕え、そして生きよ。
神殿の器具はバビロンに運ばれるが、主が顧みる日までそこに保管される。しかし時が来ればそれらをもとの場所(エルサレム)に帰らせる(27:22)
- 果たして二人の対決を聞いていた人々はどのように聞き、また見ていたでしょうか。すでにユダの王ゼデキヤの呼びかけによって「反バビロン同盟」がつくられ、その国の使者たちによる会議が持たれました。ハナヌヤとエレミヤとの決定的な違いは、前者が平安を預言する内容であるのに対し、後者はさばきを預言する内容だということです。愛国的精神からすれば前者の内容を信じたいところです。しかし本来、預言者が遣わされるのは昔から戦いや災い、疫病といった神のさばきを語ることを通して悔い改めを迫ることでした。ところが、ハナニヤにはそれが一切ないということです。
- 私たちも二人の預言者が全く異なる預言をした場合、それを見分けることは決してたやすくありません。
2. 民に偽りの希望を抱かせたハナヌヤの死
- ハナヌヤは公の前でエレミヤの首の軛を取ってそれを砕くという象徴的行為によって、自分が語った主の御告げを、再度、示しました。そこでエレミヤは「立ち去った」とあります。直訳すると「彼の道を行った」です。この時点での人々の目には、ハナヌヤの主張の方が正しく思われたに違いありません。ところがその後、エレミヤに主のことばが臨みました。
【新改訳改訂第3版】エレミヤ書 28章13~14節
『【主】はこう仰せられる。あなたは木のかせを砕いたが、その代わりに、鉄のかせを作ることになる。
14 まことに、イスラエルの神、万軍の【主】は、こう仰せられる。わたしは鉄のくびきをこれらすべての国の首にはめて、バビロンの王ネブカデネザルに仕えさせる。それで彼らは彼に仕える。野の獣まで、わたしは彼に与えた。』」
- 平和を説いたハナヌヤに対して、再度エレミヤは上記の主のことばを告げると同時に、さらに民に偽りの希望を抱かせた罪により、「今年のうちに、あなたは死ぬ」というさばきのメッセージを伝えました。ハナヌヤはなんと二か月後に死んだのです。
- 神のご計画を妨げる者に対して神は厳しく取り扱われます。ハナヌヤの犯した罪は、主から語られたことばではなく、人々が聞きたいことばを語り、幻想を民たちの中に吹き込んで惑わしました。それゆえに裁れたのです。このことは神のことばに携わる者たちが常に直面する誘惑であり、そして厳しい警告です。この世に迎合することなく、みことばに真摯に向き合い、そこから語られる神のメッセージに耳を傾けるよう肝に命じなくてはなりません。
2013.3.9
a:6551 t:1 y:1