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堕落した暗黒時代の神の灯火としてのノア

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5. 堕落した暗黒時代の神の灯火としてのノア

【聖書箇所】創世記6章9節~7章24節

はじめに

  • セツの系譜とカインの系譜との婚姻は、神が地上に人々を造ったことを悔やむほど、心を痛めるほどの堕落の一途を辿りました。そのために神は堕落したすべての肉なるものを滅ぼし、リセットしようとされました。創世記6章9節以降には「すべての」(「コルכָּל־)ということばが多く見られます。これは完全なる堕落の状態を示しています。

1. すべて神が命じられたとおりにし、そのように行った「ノア」

  • 6:22 「ノアは、すべて神が命じられたとおりにし、そのように行った。」、同じフレーズが7:5にもあります。「ノアは、すべて主が命じられたとおりにした。」
    ここで「命じられた」と訳された「ツァーヴァー」(צָוָה)はいずれも強意形が使われています。強意形(ピエル形)とは意味を強めたり、物事が反復されることを表わすときに用いられます。つまり、ノアは神が繰り返し命じられたことをすべてそのとおりに行ったということが強調されています。
  • ノアは神の言われることを信じて、多くの月日を費やして三階建の巨大な箱舟を建造します。長さも幅も、その高さもすべて神が指定しています。おそらく箱舟の中の間取りもすべて指示されたものと思われます。神の仕様書に従って彼はやがて来る未曽有の神のさばきに備えたのです。彼の時代の人々からは当然あざけられたに違いありません。ヘブル人への手紙11章7節に、ノアについてこう記されています。

「信仰によって、ノアは、まだ見ていない事がらについて神からの警告を受けたとき、恐れかしこんで、その家族の救いのために箱舟を造り、その箱舟によって、世の罪を定め、信仰による義を相続する者となりました。」(新改訳)

  • そこをリビングバイブルでは次のように訳しています。
    「ノアも、神様を信じた人です。将来の出来事について、神様から警告を受けた時、洪水のきざしなど何一つなかったにもかかわらず、そのことばを信じました。そして、時をムダにせず、すぐに箱舟の建造に取りかかり、家族を洪水から救いました。神様を信じたノアの態度は、当時の人たちの罪や不信仰と比べてひときわ輝いています。この信仰のゆえに、ノアは、神様に受け入れられたのです。」

2. 私たちの慰めとしての「ノア」

  • 神はすべての生けるものを滅ぼそうとされましたが、その時代、ノアだけが、「正しい人」(「ツァッディーク」צַדִּיק)であって、その時代にあっても全き人(「ターミーム」תָּמִים)であった。ノアは神とともに歩んだ」(6:9)とあるとおりです。しかもノアは、神の命じられたとおりにした人でした。それゆえ、神はノアとその家族(息子たちとその妻たち)だけを箱舟に入らせ、新しい時代を担うようにされたのでした。主はノアに仰せられました。「あなたとあなたの全家族とは、箱舟に入りなさい。あなたがこの時代にあって、わたしの前に正しいのを、わたしが見たからである。」(7:1)
  • 神のノアに対する評価に、「あなたがこの時代にあって」という限定があることです。ノアといえども、9章では大きな失敗をしています。ですから、「正しい人」で「全き人」というのは比較上の問題と理解しても良いのではないかと思います。「義人はいない、ひとりもいない」ということからノアも例外ではありません。むしろ6:8に「ノアは、主の心にかなっていた。」とあります。この箇所を、口語訳では「ノアは主の前に恵みを得た」、新共同訳では「ノアは主の好意を得た」、原文では「ノアは、主の目に恵みを見出した」となっていますが、ノアは神の恵みによって選ばれたと理解すべきかと思います。これは私たちにとって励ましであり、慰めです。ちなみに、「ノア」(「ノーアッハ」נוֹחַ)とは「慰めを与える者」という意味です。
  • ノアとその時代の人々とは全く対照的であったように、私たちはノアの時代と同じような状況の中で生活しています。決して逃れることのできない滅びが突然に来ることを多くの人々は知らず、またそれを信じようとはしません。この世は罪に定められているのです。唯一の救いが箱舟であったように、今日の箱舟はキリストご自身であり、そのキリストにつながることが救いです。そしてその箱舟の中に入るようにとすべての者が招かれているのです。ノアの箱舟の時と同じように(7:16)、主がその箱舟の戸を閉ざされるときがやがて来るのです。

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