ツロに対する宣告
17. ツロに対する宣告
【聖書箇所】23章1~18節
ベレーシート
- 以下のチャートに見るように、13章から続いてきた諸国民に対する神の宣告は、23章のツロに対する宣告を最後に終わります。24章以降は「世の終りについての預言」が記されています。
1. タルシシュの船よ、泣きわめけ
- 23章1節と14節に「タルシシュの船よ、泣きわめけ。」というフレーズがあります。「タルシシュの船」とは、当時の豪華商船のことであり、貿易による経済的繁栄の象徴です。「タルシシュ」は南スペインにある地名ですが、「精錬所」という意味があるようです。「タルシシュの船」とは地中海の東のツロから最西端にあるタルシシュまでを交易の範囲としていたことを物語っています。当時はアッシリヤという強大な勢力がありました。アッシリアは政治的・軍事的な意味で力をもっていた国ですが、ツロは小さな海洋都市でありながらも、巨大な富による繁栄を誇っていました。
- ツロ、そしてその北にあるシドンは、西のタルシシュ、南のエジプトを初めとする諸国と通商関係を結び、原料を輸入してはそれを加工して製品化してそれを輸出する技術をもっていたようです。特に、陶器、銀細工は優れていたようです。
- ダビデ、ソロモン時代には、ツロの王ヒラムが優れた杉材を神殿や王宮の建築材として提供していました。また預言者エリヤの時代には、シドンの王エトバアルの娘イゼベルがその王宮を去って、イスラエルの王アハブの妻となり、バアル崇拝を持ち込みました(Ⅰ列王記16:31)。
- ツロは経済の繁栄のためならば、金銭(マモン)のためならば、どんな国とも同盟関係を結んでいたため、そのことで非難されています。また同時に、思想的な対立も関係しているかもしれません。ツロと関係の深いタルシシュとキティム人(キプロス)は血筋的に近い関係です。両者ともヤペテの息子ヤワンの系列であり(創世記10章)、やがてその系列はギリシア人、つまりヘレニズム文化(人本主義)を形成する民族です。神の民であるヘブライニズム(神本主義)とは全く対立していく流れと言えます。
- エゼキエルの時代、つまりバビロンが支配する時代、ツロは商業的繁栄の絶頂にありました。周辺諸国とのかかわりおいてもきわめて重要な地位を占めて「尊ばれていたのに」(8節)もかかわらず、万軍の主はツロを「卑しめられた」(9節)のです。人間の築いた繁栄は、必ずいつかは崩壊するというのが神のメッセージです。
- ツロに対する神の宣告は、他の書でも語られています。
2. ツロに対する回復の預言
- 23章にわずかながら、ツロの回復についての預言があります。
【新改訳改訂第3版】イザヤ書23章17~18節
17 七十年がたつと、【主】はツロを顧みられるので、彼女は再び遊女の報酬を得、地のすべての王国と地上で淫行を行う。
18 その儲け、遊女の報酬は、【主】にささげられ、それはたくわえられず、積み立てられない。その儲けは、【主】の前に住む者たちが、飽きるほど食べ、上等の着物を着るためのものとなるからだ。
- ツロの繁栄の回復がなされるのはいつのことは明確ではありませんが、おそらく、24章から始まる世の終りの預言と関係がありそうです。というのは、18節に示唆されているように、ツロの繁栄の回復にはユダとエルサレムが含められているからです。ツロが再び通商によって得た富が、こんどは神の民のためささげられるようになるというに預言であり、メシア王国の到来と深く関係していると考えられます。
- 詩篇45篇12節には以下のように記されています。「ツロの娘は贈り物を携えて来、民のうちの富んだ者はあなたの好意を求めよう。」(新改訳)。この箇所はL.B訳は次のように訳しています。「当世いちばん金回りのよいツロの人々が、あなたの歓心を買おうと、贈り物を山と積んで来るでしょう。」と。「あなた」とは、この詩篇でたたえられている王なる方(メシア)のことです。
2014.8.29
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