エステルの決意
ネヘミヤ記、エステル記の目次
4. エステルの決意
【聖書箇所】エステル記4章1節~16節
ベレーシート
- ハマンのユダヤ人撲滅の陰謀を知らされたエステルの狼狽と決意が記されているのが、この4章です。エステルが王妃となったことの神のご深い計画が隠されていたことを暗示する章です。
1. エステルの狼狽ぶり
- 養父モルデカイが王の門の前の広場で、荒布を着て灰の上にすわっていることを知らされた王妃エステルは、4節で「ひどく悲しみ」(新改訳)と訳されています。新共同訳では「非常に驚き」と訳し、岩波訳は「非常に狼狽した」と訳しています。私的には岩波訳が原意に近いように思います。というのは、ここでは原語の「フール」(חוּל)の強意形ヒットパエル態が使われているからです。本来、「フール」は「跳ね回る」という意味ですが、ヒットパエル態では「ぐるぐる回る」という意味になるからです。まさに狼狽する姿です。それに「メオード」(מְאֹד)がついて、「ひどく狼狽した」という意味になります。
2. モルデカイとエステルとのやり取り
- エステルは事の真相を探るため、モルデカイのところに「ハタク」という宦官を遣わしました。この宦官「ハタク」がエステルとモルデカイとの仲介役になります。忠実な伝書鳩のように務めを果たす人物、聖書はわざわざこの宦官の名前をこの章だけで四度も記している(4:5, 6, 9, 10)のには、ある種のメッセージ性があるように思います。
- モルデカイは彼にシュシャンで発布されたユダヤ人撲滅の法令の文書の写しを渡し、それをエステルに見せて、事情を知らせてくれと言い、また、エステルが王のところへ行って、自分の民族(ユダヤ人)のために王にあわれみを請うよう言い伝えました。しかし、それは王妃といえども簡単なことではありませんでした。王からの呼び出しがないのに、王のところへ行く者はだれでも死刑に処せられるという一つの法令があったからです。
- そのことを聞いたモルデカイは、エステルに
「あなたがこの王国に来たのは、もしかすると、この時のためであるかもしれない。」という有名なことばを発します。「この王国に来た」とは、エステルがこの国に迎え入れられ、王妃としての位に着いたことを意味します。それは、もしかしたら、このような時のためであったのかもしれない」とモルデカイは諭したのです。この諭に、エステルの心は定まったのです。
3. エステルの決意
【新改訳改訂第3版】4章16節
「・・私も、私の侍女たちも、同じように断食をしましょう。たとい法令にそむいても私は王のところへまいります。私は、死ななければならないのでしたら、死にます。」【口語訳】
「・・わたしとわたしの侍女たちも同様に断食しましょう。そしてわたしは法律にそむくことですが王のもとへ行きます。わたしがもし死なねばならないのなら、死にます。」【新共同訳】
「・・私も女官たちと共に、同じように断食いたします。このようにしてから、定めに反することではありますが、私は王のもとに参ります。このために死ななければならないのでしたら、死ぬ覚悟でおります。」【岩波訳】
「・・私と私の侍女たちも同じように断食します。このようにしてから、法には適いませんが、王の所にまいります。私が滅びるものなら、滅びます。」
- この部分には、いのちを賭けたエステルの三つの決意を見ることが出来ます。
(1) 断食します
・・旧約では「断食」は「祈り」と結びついています。三日間の文字通りの断食を伴った祈りをすること。(2) 法の定めに逆らっても王のもとへ行きます
・・あえて法に背いてまで(3) (それで)死ななければならぬなら、死にます
・・そのことで自分が死んだとしても本望とするという意味。
2013.11.27
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