●北王国の者たちが南王国へ移住したことを記述している箇所
●北王国の者たちが南王国へ移住したことを記述している箇所
1.Ⅱ歴代誌11章3節
【新改訳2017】
イスラエル全土の祭司たちとレビ人たちは、すべての地域から出て来て、彼の側についた。●北イスラエルのヤロブアムは、北の民たちが南ユダのエルサレムに巡礼しないように北と南、すなわち、ダンとベテルに礼拝所を造り、そこに偶像を造らせました。そのために主の祭司たちの職を解いて、必要な祭司を一般の人々から任命し、勝手に祭りの日も定めました。主の祭司たちとレビ人はリストラされ、自分たちに与えられていた遊牧地と所有地を捨てて、エルサレムにやって来なくてはならない事態に陥りました。また主を尋ね求める者たちもレハブアムは受け入れたのです。
●ヤロブアムの宗教政策にもかかわらず、北イスラエルの中から、主を尋ね求める者たちもいたようです。彼らの存在はレハブアムを励まし、王権を強める形となったようです。レハブアムも、心をささげてエルサレムに来る者を拒みませんでした。
2. Ⅱ歴代誌15章9節
【新改訳2017】
彼(アサ王)は、ユダとベニヤミンのすべての人々、およびエフライム、マナセ、シメオンから来て彼らのもとに寄留している人々を集めた。その神、【主】がアサとともにおられるのを見て、イスラエルから多くの人々が彼のもとに下って来ていたのである。●歴代誌15章では、アサの治世の15年の第三の月に、彼はユダとベニヤミンのみならず、エフライム、マナセ、イメオンから来て身を寄せている人々をもエルサレムに集めて契約を結びました。その内容はまさに宗教改革です。
●【新改訳2017】Ⅱ歴代誌15章10~13節
10 彼らはアサの治世の第十五年の第三の月にエルサレムに集まった。
11 その日、彼らは自分たちが携えて来た分捕り物の中から、牛七百頭と羊七千匹を【主】にいけにえとして献げた。
12 彼らは契約を結び、心を尽くし、いのちを尽くして、父祖の神、【主】を求めることと、
13 だれでもイスラエルの神、【主】を求めない者は、小さな者も大きな者も、男も女も、死刑にされることとした。●アサ王は国家的レベルでその励ましに応えようとして、主にいけにえをささげただけでなく、「心を尽くし、精神を尽くして」主を求めた(דָּרַשׁ)のでした。その結果、主はその周囲の者から彼らを守り、安息を与えられた(「ヌーアッハ」נוּחַ)のです。ここで交わした誓約はとても厳しいものです。なぜなら、13節に、「だれでもイスラエルの神、【主】に求めようとしない者は、小さな者も大きな者も、男も女も、殺されるという契約を結んだ。」とあるからです。国の安定はそこにあると確信したからです。これは国家的取り組みとしてはきわめてすばらしいことでした。
3. Ⅱ歴代誌30章5~11, 21節
【新改訳2017】
5 彼らはベエル・シェバからダンに至るまで、イスラエル全土に通達を出し、エルサレムに来てイスラエルの神、【主】に過越のいけにえを献げるよう、呼びかけることを決定した。規定どおりに献げている者が多くなかったからである。
6 急使たちは、王とその高官たちから託された手紙を携えて、イスラエルとユダの全土を行き巡り、王の命令のとおりに告げた。「イスラエルの子らよ、アブラハム、イサク、イスラエルの神、【主】に立ち返りなさい。そうすれば、主は、アッシリアの王たちの手を逃れて残ったあなたがたのところに、帰って来てくださいます。
7 あなたがたは、父祖の神、【主】の信頼を裏切ったあなたがたの父たちや兄弟たちのようになってはなりません。あなたがたが見るとおり、主は彼らを恐怖に渡されました。
8 今、あなたがたは、自分たちの父たちのようにうなじを固くしてはなりません。【主】に服従しなさい。とこしえに聖別された主の聖所に来て、あなたがたの神、【主】に仕えなさい。そうすれば、主の燃える怒りがあなたがたから離れるでしょう。
9 もしあなたがたが【主】に立ち返るなら、あなたがたの兄弟や子たちは、彼らを捕虜にした人々のあわれみを受け、この地に帰って来るでしょう。あなたがたの神、【主】は恵み深く、あわれみ深い方であり、あなたがたが主に立ち返るなら、あなたがたから御顔を背けられることはありません。」
10 こうして急使たちは、エフライムとマナセからゼブルンの地に至るまで、町から町へと行き巡ったが、人々は彼らを笑いものにして嘲った。
11 ただ、アシェル、マナセ、およびゼブルンの一部の人々(とイッサカル)は、へりくだってエルサレムに上って来た。21 エルサレムにいたイスラエルの子らは、七日の間、大きな喜びをもって種なしパンの祭りを行った。レビ人と祭司たちは、毎日【主】に向かって力強い調べの楽器を奏でて、【主】をほめたたえた。
●ユダの近衛兵(口語訳は「飛脚たち」、新共同訳は「急使」)は、王の手紙をもってイスラエルとユダの全土(ベエル・シェバからダンまで)を行き巡り、アブラハム、イサク、イスラエルの神、主に立ち返り、主に服従し、主に仕えるよう呼びかけました。そうすれば、すでにアッシリヤのとりことなった人々は帰ってくることができること、そして、主は決して御顔をそむけるようなことがないことを町から町へと行き巡って伝えたのです。ところが、北イスラエルの人々は彼らを物笑いにし、あざけりました。
●ところが、伝言を聞いて王の呼びかけに応えた人々がいました。その人々とは、アシェル、マナセ、ゼブルン、エフライム、イッサカルの人々でした。しかしペサハに参加した人々は、アシェルを除いて、みな身をきよめる(聖別する)ことをしておらず、しかも神の律法に記されている方法とは異なったやり方でペサハの食べ物を食べたために、ヒゼキヤ王は彼らのために祈ります。それによって彼らはいやされたとあります(17~20節)。
●北イスラエルからエルサレムに来た人々の中で、アシェルの人々だけが正しい方法をもってペサハに参加したことは特筆すべきことです。歴代誌はこのことについて、注意を引くような形では記していませんが、暗示していると言えます。
●ルカはイェシュアを祝福したシメオンと同時に、「アシェル族のパヌエルの娘で、アンナという女預言者がいた」と記しています。ここに登場するアンナという人物が「アシェル族」の出身であるということが重要なのです。イスラエルの歴史において、「アシェル族」出身で特に名を挙げた人物はおりません。しかしイェシュアの時代にアンナという女預言者が登場していることは注目すべきことです。シメオンにしてもユダ族の中に吸収されてしまった部族です。そうした部族の出身の者が、幼子イェシュアこそ約束されたメシアであると悟ったことは神の不思議なご計画です。特に、アシェル族のアンナはイスラエルの中でも「秘蔵っ子」の子孫なのです。その彼女がエルサレムで長い間、神殿から離れることなく、断食と祈りをもって、昼も夜も神に仕えていたのです。このことについての詳しいことは、こちらを参照のこと。
4. Ⅱ歴代誌34章9節
【新改訳2017】
彼らは大祭司ヒルキヤのもとに行き、神の宮に納められていた金を渡した。これは入り口を守るレビ人が、マナセとエフライム、すべてのイスラエルの残りの者、および全ユダとベニヤミンから集めたものであった。それから彼らはエルサレムに戻り、●ヒゼキヤ王のリバイバルと改革運動から80年あまりたったヨシヤ王の時代に、同様のことが起こりました。王が神殿への捧げ物を要請したことに応え、「マナセとエフライム、すべてのイスラエルの残りの者、全ユダとベニヤミンから」(Ⅱ歴代34:9)、お金が集まったのです。
●北王国と南王国の分裂はバビロン捕囚で終わりました。バビロンから帰還した後、「ユダヤ人」と「イスラエル人」という言葉は互換的に使用されました。エズラは、帰還した残りの民を「ユダヤ人」あるいは「イスラエル」と呼び、ネヘミヤも「ユダヤ人」を「イスラエル」とも呼んでいます。新約聖書でも「ユダヤ」と「イスラエル」は同じ意味で使われています。
5. エズラ記
【新改訳2017】
2:70 こうして、祭司、レビ人、民のある者たち、歌い手、門衛、宮のしもべたち、すなわち、全イスラエルは自分の元の町々に住んだ。3:10 建築する者たちが【主】の神殿の礎を据えたとき、イスラエルの王ダビデの規定によって【主】を賛美するために、祭服を着た祭司たちはラッパを持ち、アサフの子らのレビ人たちはシンバルを持って出て来た。
6:17 彼らはこの神の宮の奉献式のために、雄牛百頭、雄羊二百匹、子羊四百匹を献げた。また、イスラエルの部族の数にしたがって、全イスラエルのために罪のきよめのささげ物として、雄やぎ十二匹を献げた。
8:35 捕囚の人々で、捕囚から帰って来た者は、イスラエルの神に全焼のささげ物を献げた。すなわち、全イスラエルのために雄牛十二頭、雄羊九十六匹、子羊七十七匹、罪のきよめのささげ物として雄やぎ十二匹を献げた。これはすべて【主】への全焼のささげ物であった。
10:5 エズラは立ち上がり、祭司、レビ人、全イスラエルの長たちに、この提案を実行するよう誓わせた。すると彼らは誓った。
●エズラ記は何度も、全イスラエル記の帰還が記されています。
6. ネヘミヤ記12章47節
【新改訳2017】
ゼルバベルの時代とネヘミヤの時代、全イスラエルは、歌い手と門衛のために定められた分を日ごとに渡していた。彼らはまたレビ人の分を聖別し、レビ人はアロンの子らの分を聖別していた。●ネヘミヤも、帰還が始まって長い時間が経った後、12部族すべてがイスラエルに帰還したことを証言しています。イスラエルは男系によって部族が決まります。例えば、アシェル族の女性がユダ族の男性と結婚するとユダ族となり、息子たちのユダ族を継承します。
●すべてのイスラエル人が捕囚から帰還したわけではない、というのは事実です。しかし失われたわけではありません。神は「すべての国々の間で、イスラエルの家をふるいにかける。ふるっても、小石は地に落ちないようにする。」(アモス9:9)と語られました。彼らはそれぞれの地でふるいにかけられましたが、ユダヤ人/イスラエル人としてのアイデンティティーを失いませんでした。ですから、ペテロが群衆に説教したペンテコステの日に、離散のユダヤ人が全世界から訪れていたのです(使徒2章)。
●今日、ほとんどのユダヤ人は自分の部族が分かりませんが、(男系相続権に基づく)ユダヤ人としてのアイデンティティーは保っています。神は全人類の系図を知っておられ、各ユダヤ人がどの部族に属するかも知っておられます。異民族と結婚し血統が薄くなったとしても、神はヤコブのすべての子孫の居場所を知っておられるのです。
2023.11.7
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