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預言者としてのメシア預言

【補完12】 預言者としてのメシア預言


【聖書箇所】申命記 18章1~22節

ベレーシート

  • 申命記18章は大きく分けて、レビ人に関する規定(1~8節)、および預言者に関する規定(13~22節)が記されています。特にこの章で最も重要なのはモーセが語った「メシア預言」です。なにゆえに「メシア預言」なのかと言えば、それが新約聖書において「メシア・イェシュア」について語られたものと解釈されているからです。

1. レビ人の規定とそこに啓示されているイェシュア

  • 約束の地において、レビ部族だけは不動産としての嗣業の地が与えられませんでした。なぜなら、主ご自身が嗣業(「ナハラー」נַחֲלָה)そのものだったからです。レビ人は他の各部族に与えられた地に住んで、神への奉仕に専心できるように、各部族の民から必要なものが与えられて生活が保障されるというシステムが、神によって定められました。そもそもレビ人はイスラエルの民の初子の身代わりです。イスラエルにおいて初子は神のものです。初子一人をささげる代わりに、レビ人一人を支えたのです。
  • そのレビ人にささげられるべき物も規定されています。それは以下の通りです。

    【新改訳改訂第3版】申命記18章3~5節
    3 祭司たちが民から、牛でも羊でも、いけにえをささげる者から、受けるべきものは次のとおりである。その人は、肩と両方の頬と胃とを祭司に与える。
    4 あなたの穀物や、新しいぶどう酒や、油などの初物、羊の毛の初物も彼に与えなければならない。
    5 彼とその子孫が、いつまでも、【主】の御名によって奉仕に立つために、あなたの神、【主】が、あなたの全部族の中から、彼を選ばれたのである。


    ●祭司(アロン直系のレビ族)とレビ人に与えられる物が記されています。以下のように、それらはすべてイェシュアを啓示しています。
    (1) 牛や羊・・つまり、「反芻し、ひづめが分かれているもの

    (2) 肩と両方の頬と胃

    ①「」と訳された「ゼルーア」(זְרוּעַ)は、腕の力をも意味し、神の救いの力を表わす象徴です。

    ②「」と訳された「レヒー」(לְחִי)は「あご」「あご骨」とも訳され、士師のひとりであったサムソンが「ろばのあご骨」で敵と戦って勝利したように、それは敵を打ち倒す力としての象徴です。あるいは「自分を打つ者に頬を与え、十分そしりを受けよ」(哀歌3:30)とあることから、力があるにもかかわらず、受難を余儀なくされるイェシュアの姿を啓示しているとも言えます。

    ③「」と訳された「ケーヴァー」(קֵבָה)は使用頻度が少なく、この箇所と他に民数記25章8節の二箇所のみです。この語は「(胃が四つもある牛の)第四の胃」を意味します。「第四の胃」で初めて人間の胃と同じ働きがなされます。つまり反芻されたものが自分のものとして吸収されることを意味しています。またこの語彙は「家の最も奥にある部屋」をも意味します。つまりイメージとしては、御父のふところにおられたイェシュア、あるいは時系列における「最終地点」「終わりの時」をイメージさせます(ヘブル1:2)。

    (3) 地の産物の「初物」(「レーシート」רֵאשִׁית
    ①「穀物の初物」・・穀物は「パン」(「レヘム」לֶחֶם)の原料です。
    ②「新しいぶどう酒の初物」
    ③「オリーブ油の初物」
    ④「羊毛の初物」

    ●これらの「初物」はすべてイェシュアに関する象徴と言えます。これらのものが提供されるのは、レビ人が神に仕えることのできるためにですが、完全に神に仕えることのできた「神のしもべイェシュア」を象徴しています。

    ●レビ人に与えるべき物としての神が定められた物の中に、イェシュアが啓示されているのです。イェシュアが「聖書(旧約聖書)が、わたしについて証言している」と言われたことを思い起こす必要があります(ヨハネ5:39)。このように、目に見える事柄の中に霊的な意味が隠されているのです。


2. モーセのようなもうひとりの預言者

  • 約束の地であるカナンの住民は、卜者、占い師、口寄せ、霊媒、死者に伺いを立てていました。イスラエルの最初の王サウルは偶像礼拝の罪によって神から退けられてしまったので、霊媒の女に頼らざるを得なかったことが記されています(Ⅰサムエル28:7~9)。これは神が忌みきらわれることです。イスラエルの民が神の立てた預言者モーセのことばに聞き従うことを、神は民に求められました。

【新改訳改訂第3版】申命記18章13~18節
13 あなたは、あなたの神、【主】に対して全き者でなければならない。
14 あなたが占領しようとしているこれらの異邦の民は、卜者や占い師に聞き従ってきたのは確かである。しかし、あなたには、あなたの神、【主】は、そうすることを許されない。
15 あなたの神、【主】は、あなたのうちから、あなたの同胞の中から、私のようなひとりの預言者をあなたのために起こされる。彼に聞き従わなければならない。
16 これはあなたが、ホレブであの集まりの日に、あなたの神、【主】に求めたそのことによるものである。あなたは、「私の神、【主】の声を二度と聞きたくありません。またこの大きな火をもう見たくありません。私は死にたくありません」と言った。
17 それで【主】は私に言われた。「彼らの言ったことはもっともだ。
18 わたしは彼らの同胞のうちから、彼らのためにあなたのようなひとりの預言者を起こそう。わたしは彼の口にわたしのことばを授けよう。彼は、わたしが命じることをみな、彼らに告げる。


●ここではイスラエルの民を「集合人格」としての単数形で、つまり「あなたは」で語られています。

●15節の「 あなたの神、【主】は、あなたのうちから、あなたの同胞の中から、私のようなひとりの預言者をあなたのために起こされる。」とあります。「私のような‥預言者」とは、民の前に立って神を代表する者が、神からのメッセージをそのまま語る者という意味において、モーセのようであるべきという意味です。しかもここではそのような「ひとりの預言者」(単数)とは、やがて神から遣わされる御子イェシュアのことです。これは「メシア預言」です。この申命記18章15節が新約聖書で引用され、あるいは前提として語られている箇所が以下のように数カ所あります。

(1) イェシュア自身

ヨハネの福音書5章46節
「もしあなたがたがモーセを信じているのなら、わたしを信じたはずです。モーセが書いたのはわたしのことだからです。」

(2) ユダヤ人に遣わされた祭司、レビ人

ヨハネの福音書1章21節
また、彼らは聞いた。「では、いったい何ですか。あなた(=
ヨハネのこと)はエリヤですか。」彼は言った。「そうではありません。」「あなたはあの預言者ですか。」彼は答えた。「違います。」

●ここでいう「あの預言者」とは、モーセが申命記18章15節で預言した「もうひとりの預言者」のことです。

(3) 初代教会の使徒ペテロと最初の殉教者ステパノ

ペテロ・・使徒3章22節
モーセはこう言いました。『神である主は、あなたがたのために、私のようなひとりの預言者を、あなたがたの兄弟たちの中からお立てになる。この方があなたがたに語ることはみな聞きなさい。

ステパノ・・使徒7章37節
このモーセが、イスラエルの人々に、『神はあなたがたのために、私のようなひとりの預言者を、あなたがたの兄弟たちの中からお立てになる』と言ったのです。


2017.10.25


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