神の敵に対して命じる祈りがあること
50. 神の敵に対して命じる祈りがあること
- 詩篇には、①神に向かって呼びかけるもの、②人々に向かって呼びかけるもの、③自分のたましいに向かって呼びかけるものがあります。さらに加えて、④神の敵に向かって命じるものがあります。決して多くはありませんが重要です。それは単なる「~してください」という嘆願ではなく、神の敵に対して神の権威をもって命令する祈りなのです。
- 17世紀、英国が生んだ有名な説教家スポルジョン(1834~1892)は、キリスト教会に対して<十字架についての教え>だけでなく、<御座についての教え>を必要としていると述べて、次のような体験を語っています。
- ある日、 スポルジョンは寝たきりの老婦人の家に呼ばれました。老婦人は栄養失調で今にも死にそうな状態でした。彼は彼女の家を訪れると、部屋の中に額縁に入れられた一枚の文書が壁にかけられていました。彼は彼女に「これはあなたのものですか」と尋ねました。彼女は「そうです」と答え。自分がかつて貴族の家のメイドとして50年仕えて来たこと、そしてその貴族の家の夫人が亡くなる前にそれを自分にくれたこと、それから10年、それを壁に掛けてあることを説明しました。彼女は字を読むことができなかったため、掛けられていた文書の内容を知りませんでした。
- スポルジョンは、その文書を預かり、その筋の権威のところに持って行き、調べてもらいました。するとそれはなんと膨大な遺産を彼女に与えるという文書だったのです。老婦人はそれが与えられていたにもかかわらず、たった一部屋しかない木の箱のような小さな家に住み、飢えて死にそうになっていたのです。
- スポルジョンはその遺産が実際に彼女のものとして使えるように手助けしました。彼女がもっと早くそのことを知っていれば、得られたはずであろう益は大きかったはずです。しかしそのことを知らないばかりに、みじめな生活をしていたのです。
- <御座についての教え>とは、イエス・キリストの死と復活、そして昇天と着座によってもたらされた膨大な霊的な遺産について目が開かれることです。またそれに気づかせることを妨げる敵に対して、「イエスの御名」という権威ある名前によってイエスの勝利を宣言し、その敵の妨げを打ち破ることなのです。この真理は聖書の中でさまざまな象徴や実例によって教えられています。たとえば旧約聖書では、モーセが「神の杖」によってエジブトの魔術師たちやその背後にある悪魔的な力と戦いました。またその杖は紅海の水を二つにを分けました。またその杖で岩を打つと水が出ました。アマレクとの戦いにおいても、その杖は勝利をもたらしました。ダビデは「契約の箱」によって神の力ある臨在をイスラエルにもたらしました。そして新約聖書では「イエスの御名」が敵に打ち勝つ唯一の権威として、私たちに与えられているのです。このことに無知であることは、あの老婦人と同じように大きな損失を招くのです。
- 詩68篇は敵に対して命令する祈りが記されている貴重な詩篇です。