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愛されることなく世を去ったヨラム

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45. 愛されることなく世を去ったヨラム

【聖書箇所】Ⅱ歴代誌 21章1節~20節

ベレーシート

  • Ⅱ歴代誌21章には、聖書の中でここにしか出てこない表現があります。それは「愛されることなく世を去った」というものです。

    「愛されることなく」の原文表記は「べ・ロー ヘムッダー」
    (בְּלֹא חֶמְדָּה)です。「ヘムダー」(חֶמְדָּה)は女性名詞で「貴重なもの」「愛すべき大事なもの」という意味。それが否定されて、ヨラムの生涯には良いことが何ひとつなかったということです。ユダの人々にとって、彼は有害無益な王であったということです。

  • 「愛されることなく」(新改訳)、「惜しまれることなく」(新共同訳)、これが8年間、ユダを治めたヨラム王の結末です。なんと悲しい結末でしょうか。そうした結末には、それなりの要因があったことを聖書は教えています。

1. 釣り合わぬくびき(結婚)をしたこと

  • ヨラムが「惜しまれることなく」世を去ったその要因の一つは、北イスラルの王アハズの娘であるアタルヤとつり合わぬくびき(結婚)をしたことでした。このことを軽く考えてならないことを使徒バウロも指摘しています(Ⅱコリント6:14)。
  • ヨタムがアタルヤと結婚したのは、その父ヨシヤパテの政策があったと思われます。神からの視点ではなく、人間的な発想からの平和的政策は思わぬ痛手を受けるのです。聖書は、ヨタムがユダの王でありながら、ダビデの道を歩まず、「アハブの家の者がしたように、イスラエルの王たちの道に歩んだ。アハブの娘が彼の妻であったからである。」と明記しています(21:6)。そこからさまざまな災いが襲ってきました。そのことを聖書は「彼は、ユダを迷わせた」と記しています。それゆえ、愛されることもなく、惜しまれることもなく、最後には、王の墓にも納められなかったのです。このことは通常の王の葬儀に対する敬意が一切払われなかったことを意味します。
  • 「迷わせた」という訳は、原語の「ナーダハ」(נָדַח)の使役形で、口語訳は「惑わした」、新共同訳は「堕落させた」と訳しています。「ナーダハ」は、本来「ふるう、振り回す」という意味ですが、使役形(ヒフィル)では「追い散らす、そそのかす、こうむらせる、(害)を加える」の意味になります。

2. 王位を恐れて、他の兄弟全員を暗殺したこと

  • 他の国ならいざ知らず、イスラエルの王制は神が決定することです。他の国の王のように、自分の力で得るものではないことをヨラムは知らなかったようです。「ヨラムはその父の王国に立つと勢力を増し加え、その兄弟たちをひとり残らず剣にかけて殺し、また、イスラエルのつかさたちの幾人かを殺した」(4節)とあります。このことが、ユダの王家の存続そのものを危険にさらすことになります。
  • また、ヨラムは「イスラエルの王たちの道に歩み、アハブの家が淫行を行わせたように、ユダとエルサレムの住民に淫行を行わせました。そのことで大きな災害がもたらせます。
  • このことは預言者エリヤの「天からの手紙」に言及されています。「天からの手紙」というのは、この時代にはエリヤはすでに天に挙げられていたからです。ヨラムの悪行に対して、主は大きな災害をもってユダの民、ヨラムの子どもたち、妻たち、そして全財産が打たれること、そしてヨラムに対しては内臓の不治の病気で苦しむことを預言されました。
  • ところで、すでにエリヤはこの世に存在していないにもかかわらず、歴代誌の著者がなぜ「預言者エリヤのもとから」の手紙(書状)だとしたのでしょうか。それは、おそらく、エリヤの弟子たちがエリヤの名を使って書かれたものかもしれません。というのも、ヨラムが北イスラエルの王アハブと深くかかわった王であり、そのアハブの前に立ちはだかった預言者がエリヤであったという事実です。それがこのことの背景にあると考えられます。

3. さまざまな災難が臨んだこと

  • 上に述べた要因によって、さまざまな災難が彼の治世において臨みました。

(1) エドムとリブナが反旗を翻す
ヨラムの時代に、それまでユダの属国となっていたエドムとリブナが背いて独立しました。

(2) ペリシテ人とアラビヤ人による来襲
王宮のすべての財産、そしてヨラムの子どもたちや妻たちが奪い去られました。

(3) ヨラム自身が不治の大病(内臓)を患い主に打たれたこと
ヨラムの末子であるエホアハズ以外はみな奪い取られたのです。「エホアハズ」はヨラムの後に王となる「アハズヤ」の幼名です。「エホアハズ」という名前は「主は私をしっかりとつかまえてくださった」という意味です。


4. ダビデ契約による主の真実

  • ヨラムの末子であるエホアハズが守られたのは、主がダビデに約束された契約のゆえです。ヨラムは主の目の前に悪を行なったにもかかわらず、

    【新改訳改訂第3版】Ⅱ歴代誌21章7 節
    【主】は、ダビデと結ばれた契約のゆえに、ダビデの家を滅ぼすことを望まれなかった。主はダビデとその子孫にいつまでもともしびを与えようと、約束されたからである。


    ※「ともしび」とは、王のことを指しています。

    とあります。
  • ヨラムの不従順に対する神の懲罰がかつてのサウル王家の滅びに匹敵するにもかかわらず、一筋の細い糸で命脈を保つことができたのはダビデに与えられた神の約束以外にありません。ダビデとの永遠の契約の正当性がここに主張されています。

2014.4.1


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