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ピラトの尋問

13. ピラトの尋問

ピラトの尋問

【聖書箇所】マタイ27:11~14、マルコ15: 1~5、ルカ23:3~5、 ヨハネ18:33~40

1. ピラトの本当の関心は何か

  • ユダヤ最高議会の訴えの中でピラトが関心をもったのは、イエスが自分をキリストだと言っているという訴えではありませんでした。早速、ピラトはイエスを自分の官邸の中にイエスを呼んで尋問しました。
  • 「あなたは、ユダヤ人の王ですか。」(ヨハネ18:33) この質問がピラトの関心の的ではないことをイエスは見抜いていました。ですから、「あなたはこのことを自分からいっているのか」と聞き返しました。事実、ピラトにとってはユダヤの王といえどもローマ帝国中のほんの小さな国の王でしかなかったはずです。イエスを引き渡した者たちがそう言っているにすぎないことで、ピラトが真に関心を持っていたのは、イエスが最後議会から死刑を要求されるほど、憎まれるほど、イエスが何をしたのかということでした。ですから「あなたは何をしたのですか。」(ヨハネ18:35)とピラトは尋ねています。

2. ピラトの尋問の結果

  • これに対してイエスは答えず、「わたしの国はこの世のものではない。」と答えました。ピラトは「それでは、あなたは(その国)の王なのか」と聞き返します。イエスは「そのとおり」だと答えます。ピラトにとってそれは理解できることではありませんでした。イエスが「わたしは真理をあかしするために生まれ、このことのために世に来たのです。真理に属する者はみな、わたしの声に聞き従います」と言った時、ピラトは「真理とは何ですか」(※1)と尋ねますが、その答えを真剣に期待している様子は見えません。
  • ピラトにとって、わけのわからぬ「この世のものではない国の王」など取るに足りないことでした。ピラトにはイエスの言う「王である」ということばが、ローマにとって反逆とは思われず、実際、無害であると判断して、イエスを訴える者たちに「私は、あの人には罪は認めません」(※2)と言ったのでした。
  • 宗教上の理由であることはピラトも分かっていたにちがいありませんが、不利な証言をされているにもかかわらず、それに対して一言も答えないイエスに、ピラトは非常に驚いたとマタイとマルコは記しています。

3. ピラトの提案に対する意外な反応

  • ピラトは過越の祭りに囚人のひとりを赦免する慣習を利用して、イエスを助けようとします(ヨハネ18:39~40)。ところが、事態は彼の思惑とは全く異なった方向に行ってしまいます。最高議会の人々は大声でバラバの釈放を要求しました。このバラバは「強盗」と訳されていますが、原語はレーステース(ληστης)で、本来、反逆者を意味することばです。つまり、彼は単なる強盗ではなく、ローマ軍に対してテロ活動をしていた人物―レジスタンス運動の一員―でした。マタイは「バラバという名の知れた囚人」(27:16)と記しています。ピラトの思惑は彼らがレジスタン運動の一員であるバラバの赦免を願うならば、それを擁護することと同じであり、必然的にローマに敵対する者とみなされてしまうことになるわけですから、「バラバ」の釈放を要求されとき、おそらくピラトは驚いたに違いありません。イエスを助けようとするピラトの思惑は完全に外れました。そして、次第に、ピラトには見えてきます。イエスを引き渡したのは大祭司たちのねたみによるものだ、ということを・・・。しかしそれ以上に、ピラトをの心を不安にさせたのは群衆たちの動きでした。


※1 ピラトの「真理とは何ですか」という問いについて、山岸師によれば(山岸登著「ギリシャ語新約聖書直訳によるヨハネの福音書各節注」エマオ出版、2004)、ここでの「真理」には冠詞がなく、ピラトの発言を「真理とは何ですか」と訳すと、「あなたの語っているその真理とは何ですか」という意味になるが、ここではむしろ、「真理なんていうものは世にあろうか」と訳すべきだと述べています。


※2 ピラトは「あの人には罪を認めない」(ヨハネ18:38)、「あの人に何の罪も見られない」(同、19:4)、「私はこの人には罪を認めません」(19:6)と、三度もイエスの無罪を主張しています。ここで「罪」と訳されている原語はアイティア(αίτία)。新約聖書で20回使われていますが、ヨハネでは上記の3箇所のみです。NIV訳ではすべて basis for a charge と訳しています。つまり、「告発の理由(論拠)」という意味であり、それがイエスに見られないとピラトは主張しています。ピラトは三度もイエスには死に価するような告発の理由が全くないことを主張しています。このことがピラトの尋問で重要なところです。

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