ネヘミヤの総督という賜物と使命
ネヘミヤ記の目次
7. ネヘミヤの総督という賜物と使命
【聖書箇所】 7章1節~72節
ベレーシート
- ネヘミヤ記第7章には、ネヘミヤが「総督」という立場での務めなす賜物が与えられていたことを教えてくれます。
- エズラとネヘミヤの二人は同じく指導者でありながら、その賜物と使命が全くことなっていることを思わせられます。前者のエズラは神の律法を教えながら、神の民のひとり一人が「トーラー・ライフスタイル」を築くことができるようにするというのがその使命です。教えるという賜物、もちろんそのための組織づくりもしたはずです。しかし、後者のネヘミヤは、どちらかというと行政能力の賜物が与えられ、その使命は、単に城壁を再建することだけでなく、神の都エルサレムを神の民の宗教的中心地とするために、町としてのあらゆる機能を整備することでした。これはエズラにはできなかったことです。ですから、エズラの他の賜物とネヘミヤの賜物は、二つで一つの使命を果たすことにあったと言えます。どちから一方だけでは神の民の再建は完成しなかったということです。
- エズラの取り組みは目に見えない部分、つまり本質的な部分であり、いのちにかかわる部分です。しかしネヘミヤの取り組みは、目に見える部分、つまり、制度や組織といった行政機構にかかわる部分です。そうた視点から、第7章を見てみたいと思います。
1. 総督ネヘミヤには行政的任命権が与えられていた
- 「総督」という立場は、行政面においての任命権を与える立場でした。1節にはこうあります。
城壁が再建され、私がとびらを取りつけたとき、門衛と、歌うたいと、レビ人が任命された。
- ここで注目したいことは、城壁再建の全責任を持っていたのはネヘミヤですが、神殿で働く者たちの任命権をネヘミヤが持っていなかったことを示しています。だれが「門衛と、歌うたいと、レビ人」を任命したのかといえば、おそらく神殿の働きにかかわる大祭司の領域であったろうと思われます。しかし、町全体の行政、治安等の組織づくりは、ネヘミヤが責任をもっていたようです。その証拠に、2節ではネヘミヤの兄弟ハナニと、、城壁の警備にあたる総責任者ハナヌヤに対して、「エルサレムを治めるように」と命じています。新共同訳では、二人に「エルサレムの行政を託した」と訳しています。
- エルサレムを敵から守るために、城壁の多くの門の警備はきわめて重要でした。また、エルサレムが町としての機能を十分に果たしていくためには、組織化、制度化、秩序化する取り組みが必要であったろうと思われます。
2. ネヘミヤが系図を記載した目的
【新改訳改訂第3版】ネヘミヤ記7章5節
私の神は、私の心を動かして、私がおもだった人々や、代表者たちや、民衆を集めて、彼らの系図を記載するようにされた。私は最初に上って来た人々の系図を発見し、その中に次のように書かれているのを見つけた。
- ネヘミヤがエルサレムを町としての機能を果たしていくための組織づくりが不可欠であったはずです。そのために、神がネヘミヤの心を動かして、民の系図を記載させたのです。そのときに、ネヘミヤは最初のエルサレムに帰還した時に作成された系図を発見しました。そのときのものと、ここ7章で記されているのは、数において若干ことなります。また数だけでなく記載事項も異なりますが、そうしたいくつからの違いはここでは大きな問題とはなりません。それを用いて、何をしようとしたが重要だからです。
- 7節に使われている「系図を記載する」という言葉の原語は「ヤーハス」(יָחַשׂ)です。旧約では20回使われていますが、歴代誌とエズラ、ネヘミヤ記にのみ使われています。つまり、イスラエルの帰還後にはじめて使われるようになった語彙ということです。それは、新しいエルサレムの町を建てるために求められた「系図の記載」であったことを物語っています。その担い手を十分把握するための、行政的登録を意味するものであったことが考えられます。ここで使われている「ヤーハス」(יָחַשׂ)は強意形のヒットパエル態が使われています。ちなみに、歴代誌は、エズラによってこれまでのイスラエルの歴史を見直し、新しい歴史観から神の民の育成を図るために書き記されものでした。
- 「ヤーハス」(יָחַשׂ)の使用箇所は以下の通りです。
Ⅰ歴代誌10回(4:33/5:1, 17/7:5, 7, 9, 40/9:1, 2)
Ⅱ歴代誌 5回(12:15/31:16, 17, 18, 19)
エズラ記3回(2:62/8:1, 3)
ネヘミヤ記2回(7:5, 64)
- 系図を記載させることは、ネヘミヤの思い付きではなく、神が彼に働きかけてそのようにされたことが聖書に記されています。
2013.11.5
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