ダビデの霊性の特徴を表わすエピソード
サムエル記の目次
46. ダビデの霊性の特徴を表わすエピソード
【聖書箇所】 21章1節~22節
はじめに
- 21章から24章までは付録的な部分とされていますが、決してそうではなく、ダビデの霊性がよく表されている大切な出来事が記されています。
- 21章は二つのエピソードからなっていますが、いずれもダビデが生涯苦しむことになったサウル家とのかかわりとペリシテ人との戦いです。
- 最初の一つは、3年間の飢饉を契機として、ダビデがサウル王とその息子のヨナタン、およびサウルの犯した罪によって殺されたサウル家の残党の遺骨をサウル家の先祖の墓に丁重に葬ったことです。後の一つは、ペリシテ人との戦いにおいてダビデは常に戦いの先頭に立った人ですが、次第に、有能な勇士がダビデを支えるようになっていきました。ダビデの存在はイスラエル全体のなくてはならないともしびとしてその存在価値は増すばかりでしたが、そのダビデに代わって戦う勇士たちの存在が強敵ペリシテから守ったこととがが記されています。
1. サウルの犯した罪はサウル家を自ら壊滅させた
- イスラエルに3年間の飢饉が襲いました。ダビデがそのことで主に伺うと、サウルとその一族に、血を流した罪があることが示されました。その罪とはかつてイスラエルが約束の地に入ったとき、ヨシュアとギブオン人との間に結んだ盟約を破り、サウルとその一族がギブオン人たちを殺したことがあったようです。それはその理不尽な出来事であり、それゆえに「飢饉」がもたらされているということでした。
- ダビデは王として飢饉の問題に対してギブオン人たちのうちにある怨念に対処する必要に迫られました。ギブオン人の要求は自分たちを断ち滅ぼそうとした者、滅ぼしてイスラエルの領土のどこにもおらせないように企んだ者の子ども7人を引き渡すことでした。ダビデはその要求に答えて、サウル王のそばめであったリツパの二人の息子とサウルの娘の5人の息子たちをギブオン人に引き渡しました。彼らは引き渡された7人の者を殺し、さらし者にしたのです。
- しかし重要なことはそのあとにダビデがした行為です。サウル王は約束を守らない人間であることをダビデ自身も経験させられました。その身から出た錆がサウルの息子や孫たちに降りかかったのです。ダビデはこのことを契機に、ダビデ自らサウルの骨とその息子ヨナタンの骨をサウル家の先祖の墓に丁重に収めたことです。そのダビデの好意を見て、イスラエルの人々はギブオン人に殺されてさらし者にされた者の骨を集めて同じく墓に収めました。
- はからずも、この一件によってサウル家は完全に消滅したとも言えます。しかしダビデはひとたび神から油注がれたサウルとその一族に対して、終始、誠意を尽くしています(但し、故意に反乱を起こそうとしたシェバ以外は)。
- ダビデ王朝がこれから続いていきますが、サウル家の残党は完全に根絶やしにされてしまったと言えます。ダビデがそうしたのではなく、サウル自身が墓穴を掘ったとも言えます。
2. ダビデを支えた4人の勇士たち
- イスラエルの強敵ペリシテとの戦いにおいて、ダビデの部下たちはダビデ王に「あなたは、もうこれから、われわれといっしょに戦いに出ないでください。あなたがイスラエルのともしびをけさないために。」(21:17)と懇願しています。それほどに、ダビデは戦いの人であり、常に勇気をもって陣頭指揮を執る王でしたが、年齢とともに次第に体力的に「疲れる」ようになってきたと思われます。ダビデはイスラエル人にとって希望のともしび的存在であったのです。
- 21:15~22には、巨人ゴリヤテの親戚に当たる者たちに対して戦って勝利をもたらした4人の勇士たちの名前が記されています。ダビデは神に愛されただけでなく、自ら命をかけて戦う部下たちにも恵まれた人でした。
2012.8.18
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