****** キリスト教会は、ヘブル的ルーツとつぎ合わされることで回復し、完成します。******

いと高き方の隠れ場に住む者

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2. いと高き方の隠れ場に住む者

【聖書箇所】 詩篇91篇1節

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【読み】
ヘブル語の原文は右から左に読みます。ヘブル語の上に表記されたカナ表記は単語ごとに左から右に読みます。全体を続けて読むと以下のようになります。太字は揚音。
ヨーシェーヴ ベーテル エルヨーン ベツェール シャッイ イトゥローナーン

【文法】
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【翻訳】

【新改訳改訂3】 いと高き方の隠れ場に住む者は、全能者の陰に宿る。
【口語訳】 いと高き者のもとにある/隠れ場に住む人、全能者の陰にやどる人は
【新共同訳】 いと高き神のもとに身を寄せて隠れ/全能の神の陰に宿る人よ
【NKJV】 He who dwells in the secret place of the Most High 
shall abide under the shadow of the Almighty.

【瞑想】

この節はパラレリズム(同義的並行法)になっています。「いと高き方の隠れ場に住む」ことと「全能者の陰に宿る」ことは同義なのです。同じ内容を別の言い方で表現するヘブル語特有の表現語法です。「いと高き方」(エルヨーンעֶלְיוֹן)と「全能者」(シャッダイשַׁדַּי)、「隠れ場」(セーテルסֵתֶר)と「陰」(ツェールצֵל)、「住む」(ヤーシャヴיָשַׁב)と「宿る」(リーンלִין)がそれぞれ対応しています。

「隠れ場」「全能者の陰」を、ある人は幕屋の「至聖所」だと解釈しています。「至聖所」とは契約の箱が置かれた所で、幕屋の最も奥にある場所です。そこは神の臨在の場所、神が人に語りかける唯一の場所です。旧約においては、モーセや大祭司アロンといった選ばれた者しか入ることは許されませんでしたが、今やキリストにある者ならだれでも自由に入ることのできるシークレット・プレイスです。そこはだれにも知られることのない密かな場所であり、愛の秘密の場所といえます。そのような場所を持っている人は、全能者の陰に「宿る」ーabide(とどまる), remain(とどまる)、rest(休息する、休む)ーのです。

神との密度の濃い霊的な交わりの場、その場こそ信仰者のいるべきところです。限られた人生を自覚的に、一刻でも長く主と親しい交わりを持つということは最高の恵みであり、特権です。そしてそこから、永遠に意味のある、最も生命的な活動が生まれてきます。主イエスご自身が御父の陰に宿り、そこに隠れ場をもっておられました。神の栄光はいつもそこから輝き出たのです。御子イエスが地上において見せて下さった御父とのかかわりこそ、詩篇91篇1節が示すところです。そして、このイエス・キリストこそ私たちの信仰の創始者であり、完成者なのです。すべての模範はそこにあります。

「宿る」と訳された動詞「ルーン」לוּןは、旧約で69回、そのうち詩篇ではわずかに5回しか使われていません。しかしそれは主との深いかかわりを表す重要な動詞です。「ルーン」לוּןは「 (夜を)過ごす、泊まる、宿る、とどまる、憩う、眠りに就く」といった意味ですが、詩篇91篇では強意形のヒットパエル(いわば強いて自分にさせること)が使われており、そこに作者の明確な意志が込められています。つまり、「自らをして全能者の陰に宿らせる」という意味です。その証拠のひとつとして、この詩篇91篇の作者は2節で自ら「私は主に申し上げよう。『わが避け所、わがとりで、私の信頼するわが神。』と。」と告白しています。

「自らをして全能者の陰に宿らせる」という意志は、主なる神にも認められていることが14節以降を見ると分かります。ちなみに、14~16節は自らをして全能者の陰に宿らせる者に対する神の祝福の約束が記されています。「彼がわたしを愛しているから、わたしは彼を助け出そう。彼がわたしの名を知っているから、わたしは彼を高く上げよう。」(14節)と。

主の幕屋で使われるすべてのものを巧みに設計し、また教える力を与えられた人物がいます。その人物の名前はユダ部族の「ベツァルエル」(בְּצַלְאֵל)です(出35:30~34)。主は彼を名指しで召し出し、知恵と英知と知識とあらゆる仕事において、神の霊を満たされました。そのようにして幕屋建造というプロジェクトを成し遂げさせたのです。「ベツァルエル」(בְּצַלְאֵל)という名前は「神の陰に(いる者)」という意味で、詩篇91篇の「ベツェール・シャッダイ」と同義です。「神」を表わす「エール」(אֵל)が「全能者」を表わす「シャッダイ」になっているだけです。それにしても、神の陰で、神の霊に満たされた「ベツァルエル」の「知恵(「ホフマー」חָכְמָה)と英知(「テヴーナー」תְּבוּנָה)と知識(「ダアット」דַּעַת)」は、まさにすばらしいの一言です。それによって「巧みな設計をなす者」(意匠を考案する者)として用いられたのです。

「いと高き方の隠れ場に住む者は、全能者の陰に宿る。」と語っているのは「人称なき存在の声」です。新約で言うならば、聖霊の声です。その方は私たちのかたわらにいつも寄り添いながら、神と私たちの生きたかかわりを建て上げようと、助け、励ましてくださろうとしておられるのです。

【付記】
「シークレット・プレイス」(Secret Place/詩篇91篇1節、4節) ⇒楽譜

2013.2.16


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