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諸国に対する主の宣告「わたしは取り消さない」(1)

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1. 諸国に対する主の宣告「わたしは取り消さない」(1)

【聖書箇所】アモス書1章1~15節

 画像の説明

ベレーシート

  • ヨエルはユダに対して神のことばを語った預言者でしたが、アモスは南ユダ王国のテコアの出身でありながら、北イスラエルに対して語った預言者です。ヨエル書にはいつの時代に預言したのか、それを位置づけるものがありませんが、アモス書の場合は明確に預言した時代が記されています(1:1)。1章1~2節のアモス書の序文に注目したいと思います。

1. アモス書の序文

【新改訳改訂第3版】アモス書1章1~2節
1 テコアの牧者のひとりであったアモスのことば。これはユダの王ウジヤの時代、イスラエルの王、ヨアシュの子ヤロブアムの時代、地震の二年前に、イスラエルについて彼が見たものである。
2 彼は言った。「【主】はシオンから叫び、エルサレムから声を出される。羊飼いの牧場はかわき、カルメルの頂は枯れる。」


(1) 「アモス」という名前の意味

  • 「アモス」のヘブル表記は「アーモース」(עָמוֹס)です。動詞「アーマス」(עָמַס)の「荷を負う、担う」に由来し、「重荷を担う者」という意味です。あるいは、「民」を意味する「アム」(עַם)と、「遠くに置かれる」ことを意味する「ムーシュ」(מוּשׁ)の合成語とする考え方もあります。それによれば、「アモス」とは「民が遠くに置かれる」という意味になります。とすれば、それは北イスラエルの民が神から遠くに置かれるという預言的メッセージを持つことになります。

(2) アモスの預言の時期

  • アモスが預言した時期は「ユダの王ウジヤの時代、イスラエルの王、ヨアシュの子ヤロブアムの時代」とあることから、B.C.783~742年頃に語られたものと考えられます。北イスラエルの「ヨアシュの子ヤロブアム」とは「ヤロブアムニ世」のことです。⇒「北イスラエル王国の年代表」参照
  • ヤロブアム二世は、北イスラエルの13代目の王であり、エフー王朝の四代目の王です。同じ名を持つ一世は、旧約の歴史の中で悪名高い存在で、金の子牛をイスラエルに持ち込んだ王です。その偶像礼拝の罪のゆえに、聖書では手厳しく断罪されています。旧約聖書では「善と悪」を「ダビデの道とヤロブアムの道」と象徴的に分けているほどです。しかし世俗的な面から言えば、ヤロブアム一世は北王国の創設者であり、いわば手腕のある存在です。その名を受け継いだ事自体、ヤロブアム二世が一世と肩を並べる程の人物だったことを示唆しています。
  • ヤロブアム二世の父ヨアシュは、隣接する敵国であるアラムに奪われた領土の一部を奪回しましたが、息子のヤロブアム二世は領土拡張政策を継続しました。その結果、国内の生活の水準は著しく向上し、建設事業推進の機運が高まって行きました。
  • これは、日本がバブル経済を経験するまでの高度経済成長と似ています。飛躍的な経済成長と相まって、多くの政治家たちや官僚たちの不正が行なわれたことは今や周知の事実です。こうした経済的成長の機運の中で、預言者アモスは富裕階級にある者たちが自らの利益を追求して贅沢な暮らしを享受し、安易な生活を送りながら、貧困階級にある者たちを顧みないことを非難しました。非難するだけでなく、その刑罰としての災いが迫っているという神のことばを語ったのです。ヤロブアム二世は、北イスラエルの歴代の王の中では最も長い41年間という治世でした。国としては最も安定していた時代であったと言えますが、その安定の陰にあって社会的不正が跋扈(ばっこ)していた時代でもあったのです。

2. 獅子の咆哮(ほうこう)

【新改訳改訂第3版】アモス書1章2節
【主】はシオンから叫び、エルサレムから声を出される。
羊飼いの牧場はかわき、カルメルの頂は枯れる。


【新改訳改訂第3版】ヨエル書3章16節
【主】はシオンから叫び、エルサレムから声を出される。
天も地も震える。

  • いずれもその前半のフレーズは全く同じフレーズです。どちらが先なのか・・それについて考えることはここでは問題ではありません。動詞の「叫ぶ」(「シャーアグ」שָׁאַג)という語彙について考えることが重要です。この語彙は21回使われています。たとえ「獅子」(「アルイェー」אַרְיֵה)ということばが無くても、「シャーアグ」だけで「獅子がほえる」ことを意味します。しかもこの「シャーアグ」は、罪に対する主の怒りとさばきを表現するのに用いられています。「獅子が叫んだ」後ではすでに時は遅しです。

3. リフレインを用いた神のさばきの宣告

  • 「リフレイン」(反復句)を用いることで、それを聞く者にとってより印象的な効果を上げるという手法をアモスは意図的に用いています。楽曲でいうと「サビ」(コーラス)の部分です。

    〇〇〇〇の犯した三つのそむきの罪、四つのそむきの罪のために、わたしはその刑罰を取り消さない。

  • 〇〇〇〇の部分に諸国の名前が入ります。「三つの罪、四つの罪」とは何なのでしょう。しかも、3+4=7 という組み合わせです。7は完全数です。1+6という組み合わせでも、また2+5という組み合わせでもありません。3+4という組み合わせになっているところに意味があります。この組み合わせが、完全数としての「三」と無限数としての「四」の組み合わせと解釈するならば、諸国の「そむきの罪」は到底赦し難いものであることを象徴していると考えられます。その証拠に、「わたしはその刑罰を取り消さない」としています。
  • 「取り消さない」と訳されたヘブル語は「ロー・シューヴ」(לֹא שׁוּב)で、以下のようにも訳されます。
    「撤回しない」(岩波訳)、「後へは引かない」(関根訳)、「ゆるさない」(口語訳)、「決してゆるさない」(新共同訳)
  • その後に、罪のさばきの理由が語られ、その刑罰(「火を送って宮殿を焼き尽くす」)についても、それぞれの国に対して語られます。

    (1) ダマスコ
    理由・・彼らが鉄の鋭い打穀機でギルアデを踏みにじったから。
    刑罰・・主は王の家に火を送り、王の宮殿を焼き尽くす。ダマスコのかんぬきを砕き、住民と杖を持つ支配者を断ち滅ぼし、民を捕らえ移す。

    (2) ガザ
    理由・・捕囚の民を捕らえ移すときに、彼らをエドムに引き渡したから。
    刑罰・・主はガザの町に火を送って宮殿を焼き尽くし、住民と杖を持つ支配者を断ち滅ぼし、残った者を滅ぼす。

    (3) ツロ
    理由・・イスラエルの捕囚の民をエドムに引き渡した。なぜなら、彼らはエサウとヤコブとの間の契約を覚えていなかったから。
    刑罰・・主はツロの町に火を送って宮殿を焼き尽くす。

    (4) エドム
    理由・・剣で自分の兄弟(ヤコブ)を追い、たえず怒りを保っていたため。
    刑罰・・主はエドムの町に火を送って宮殿を焼き尽くす。

    (5) アモン
    理由・・自分たちの領土を広げるために、ギルアデの妊婦を切り裂いたため。
    刑罰・・主はアモンの町に火を送って宮殿を焼き尽くす。また彼らの王と首長たちは捕囚される。


2015.2.4


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