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聞け、主のことばを(神のみおしえを)

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補完No.2. 聞け、主のことばを(神のみおしえを)

【聖書箇所】1章10~31節

ベレーシート

  • イスラエルの歴史において預言者が登場したのは、神の民が神のみおしえ(トーラー)から逸脱してしまったからです。神の民の罪を糾弾して、本来の神のみおしえに聞き従わせ、神のご計画を実現するためです。したがって、イザヤ書1章10節以降において重要な箇所は10節です。イザヤは、滅ぼされて当然の「ソドムとゴモラ」にたとえてエルサレムの指導者たちとその民に命じています。

【新改訳改訂第3版】イザヤ書 1章10 節
聞け。ソドムの首領たち。【主】のことばを。
耳を傾けよ。ゴモラの民。私たちの神のみおしえに。


●「聞け」・・これは聴従を意味する「シャーマ」 (שָׁמַע)の複数命令形「シムウー」(שִׁמְעוּ)です。ちなみに、単数命令形は「シェマ」(שְׁמַע)で、申命記6章4節の「聞きなさい。イスラエル」(「シェマ・イスラーエール」שְׁמַע יִשְׂרָאֵל)で使われています。何に聞き従い、何に耳を傾けるのか。それは「主のことば」であり、「神のみおしえ」です。今日でいうならば、聖書に記された神のみことばです。聖書のことばを聞くかどうかは、今日的問題でもあります。果たして私たちは聖書を正しく読んできたのか、あるいは読んでいるのか、常に、自分自身に問いかけ続ける必要があります。


1. イザヤとイェシュアが登場した社会構造は似ていた

  • イザヤの時代にはアッシリヤという強大な勢力が台頭し、中東にある国々がその勢力に翻弄されるようになった時代でした。この時に、イザヤが神の預言者として召されたのです。この構図は、イェシュアの時代と似ています。ユダヤは、北イスラエル滅亡後、バビロン、メディヤ・ペルシャ、ギリシア、そしてイェシュアの時代にはローマによる強大な国によって支配され続けました。その異邦人の支配の中で、ユダヤ社会はさまざまな影響を受けることになりますが、神にとって最も大きな問題は、神の民(ユダヤ人)が神のみおしえ(律法=トーラー)から大きく逸脱していったことです。そこで神は、民が本来のみおしえに立つべく、まさにリビング・トーラ―(生けるトーラー)としての御子イェシュアを、最後の切札としてこの世に遣わしました。これがクリスマスと言われる出来事です。
  • イザヤが登場した時代の社会構造とイェシュアが登場した時代の社会構造は、以下のようにとても似ていました。ユダヤ人たちを支配するローマ帝国の勢力、ユダヤ人の勢力、そしてイェシュアという神の勢力、これら三つの嵐が、「パーフェクト・ストーム」(Perfect storm―完全なる嵐)のように激しくぶつかり合った時代でした。
  • イェシュアが語ったことばの中にはイザヤが語ったことばが多く引用されていますが、その中に、当時の宗教指導者たちの偽善を糾弾することばがたくさんあります。「偽善」とは外側と内側が異なること、つまり、人に見えることと、実際やっていることに整合性がないということです。目に見える宗教的行為(礼拝、ささげ物)が変わりなく保持されながら、実際の生活がそれに矛盾していることなのです。

2. 指導者たちの偽善

  • イザヤを通して神は、ユダの民の礼拝でのささげ物に対して、「飽きた」「喜ばない」「携えて来るな」とし、例祭を始めとする集会にも「耐えられない」「憎む」「疲れ果てた」としています。祈りさえも「目をそらす」「聞くことはない」としています。形骸化した礼拝、心のこもらない礼拝ということではなく、偽善に対する神の拒絶が語られています。この偽善こそ「悪」であり、「悪事を働く」ことなのです(16節)。そして、それを取り除くように命じています。その悪はどのようにして表われるかといえば、「わいろを愛し、報酬を追い求め、みなしごのために正しいさばきをせず、やもめの訴えを取り上げない」ことです(23節)。
  • イェシュアも当時の律法学者やパリサイ人の偽善を鋭く断罪しています。「偽善」ということばは、マタイの福音書では15回。マルコの福音書では1回のみ。ルカは4回です。神との縦の関係が崩れると、それは横の関係に影響を与えます。
  • ここで、マタイの福音書にある、イェシュアが偽善者たちに対して語ったことばを取り上げてみたいと思います。

(1) 善行における偽善 

●当時の善行は「施し、祈り、断食」でした。しかしそうした行為が神からの恵みに対する行為ではなく、「人にほめられたくてする行為」となってしまっていました(マタイ6:2~18)。

(2) 人の目にあるちりを取り除こうとする偽善

●イェシュアは、自分の目の中にある梁に気づかずに、人の目の中にあるちりを取り除こうとしている偽善を指摘しています(マタイ7:5)。それは「重箱の隅をつつくような行為」です。つまり、本質的でない事柄について追及し、不要で取るに足りない枝葉末節の事柄にネチネチと文句をつけようとすることです。当時の律法学者やパリサイ人は神のみおしえを、自分たちが人々を支配するための「規則」「禁止」「罰則」に変質させてしまいました。つまり神のみおしえを、人間の解釈によって、自分たちを権威づけるための「言い伝え」(口伝律法)としてしまったのです。このことが、神が御子を遣わさなければならなかった真の理由です。

(3) 外側だけを良く見せようとする偽善

●イェシュアは当時の宗教的指導者のことを「目の見えぬ手引きども」「愚かで目の見えぬ者たち」と呼んでいます。「目」はからだ全体を表わす象徴です。ですから、イェシュアは「からだのあかりは目です。それで、もしあなたの目が健全なら、あなたの全身が明るいが、もし、目が悪ければ、あなたの全身が暗いでしょう。」(マタイ6:22~23)。と言われました。「目の見えぬ手引きども」は人々を健全でなくさせてしまうのです。そのために、人々はみおしえの中に啓示されている神のご計画とみこころ、御旨(喜び)も目的も悟れなくなってしまったのです。


  • マタイの福音書15章にはイザヤ書29章13節から引用したことばがあります。二重括弧の部分がそうです。

【新改訳改訂第3版】マタイの福音書15章6~10節
6 ・・・こうしてあなたがたは、自分たちの言い伝えのために、神のことばを無にしてしまいました。
7  偽善者たち。イザヤはあなたがたについて預言しているが、まさにそのとおりです。
8 『この民は、口先ではわたしを敬うが、その心は、わたしから遠く離れている。
9  彼らが、わたしを拝んでも、むだなことである。人間の教えを、教えとして教えるだけだから。』」
10  イエスは群衆を呼び寄せて言われた。「聞いて悟りなさい。・・」


  • マタイ23章には「わざわいだ。偽善の律法学者、パリサイ人」として、彼らの偽善をこれでもかと言わんばかりに糾弾しています。

【新改訳改訂第3版】マタイ23章13~15, 23~28節
13 わざわいだ。偽善の律法学者、パリサイ人。おまえたちは人々から天の御国をさえぎっているのです。自分も入らず、入ろうとしている人々をも入らせません。
14〔わざわいだ。偽善の律法学者、パリサイ人。おまえたちはやもめの家を食いつぶし、見えのために長い祈りをしています。だから、おまえたちは人一倍ひどい罰を受けます。〕
15 わざわいだ。偽善の律法学者、パリサイ人。おまえたちは改宗者をひとりつくるのに、海と陸とを飛び回り、改宗者ができると、彼を自分より倍も悪いゲヘナの子にするのです。

23 わざわいだ。偽善の律法学者、パリサイ人。おまえたちは、はっか、いのんど、クミンなどの十分の一を納めているが、律法の中ではるかに重要なもの、正義とあわれみと誠実を、おろそかにしているのです。これこそしなければならないことです。ただし、十分の一もおろそかにしてはいけません。
24 目の見えぬ手引きども。ぶよは、こして除くが、らくだは飲み込んでいます。(※)
25 わざわいだ。偽善の律法学者、パリサイ人。おまえたちは杯や皿の外側はきよめるが、その中は強奪と放縦でいっぱいです。
26 目の見えぬパリサイ人たち。まず、杯の内側をきよめなさい。そうすれば、外側もきよくなります。
27 わざわいだ。偽善の律法学者、パリサイ人。おまえたちは白く塗った墓のようなものです。墓はその外側は美しく見えても、内側は、死人の骨や、あらゆる汚れたものがいっぱいです。
28 そのように、おまえたちも外側は人に正しく見えても、内側は偽善と不法でいっぱいです。


※「ぶよは、こして除くが、らくだは飲み込んでいます。」(23:24)―ヘブル語特有の慣用句的表現です。意味としては、「自分の目の梁に気づかずに、人の目のちりを取ろうとしている」ことに似ています。つまり、律法の細部にこだわり過ぎて、もっと大切なことが見落とされているということです。


  • このような偽善者のかなかすを取り除くために、神は異邦の国を用いて、イスラエルの民(ユダヤ人も含む)を回復させるだけでなく、遊女となってしまった「エルサレム」(シオン)をも、再び、「正義の町」「忠信な都」とさせるのです。これこそ、復活のわざにも等しい神の奇しいわざなのです。

2017.12.20


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