瞑想Ps110/A
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瞑想Ps110/A
- 新約聖書で引用される詩篇の箇所としては、この詩篇の第１節は最も多いようです。おそらくこの詩篇を書いたダビデはこの詩篇が意味する意味を理解してはいなかったかもしれません。その意味で＜預言的詩篇＞と言えます。聖霊によってなされる預言は、しばしばその語る本人が理解できないこともあるのです。
- イエスの時代の律法学者やバリサイ人も、この詩篇の意味することを理解してはいませんでした。まず、最初の1節にある「【主】は、私の主に仰せられる。」ということが、なんのことかを理解することが難しいようです。原文では、「【主】」はヤーウェיהוה、「主」とはアドナイ(אֲדֹני)というヘブル語が使われています。これは、【主】を御父とし、「主」を御子イエス・キリストと解釈することができます。しかしダビデの時代にはまだこのことが啓示されていません。しかしダビデは聖霊によって、御父が御子に語っているその光景を目の当たりにしながら記しているのです。
- 1節後半の「わたしがあなたの敵をあなたの足台とするまでは、わたしの右の座に着いていよ。」ということばは、御子イエスが十字架の死のあとによみがえられて、天に昇られたあとです。そのときから後の時代のことが預言されています。2節の「【主】は、あなたの力強い杖をシオンから伸ばされる。」は、キリストが再臨によってこの地(シオンを中心として)を統治するこを預言しています。また、5節と6節の 「あなたの右にいます主は御怒りの日に、王たちを打ち砕かれる。 主は国々の間をさばき、それらをしかばねで満たし、広い国を治めるかしらを打ち砕かれる。」というのは、ハルマゲドンの戦いとその後の千年王国を預言していると考えられます。
- それまでの間、御子イエス・キリストは天において大祭司としての務めを果たしておられます。このことを詳しく教えているのが新約のヘブル書です。詩篇110篇4 節にも、その大祭司のことが記されています。 「【主】は誓い、そしてみこころを変えない。『あなたは、メルキゼデクの例にならい、とこしえに祭司である。』」と。
- 神の御座の右に着座されているこの大祭司の最も重要な働きは、神の民の心のうちに神の律法を書き記すことです。「心に神の律法を書き記す」とは、義務や強制としての律法ではなく、民みずから愛をもって主にかかわることを意味します。自意、自発的な服従です。そこには主を知っている喜びがあります。この喜びを私たちに与えるためにとりなしておられる方こそ大祭司キリストです。
- ちなみに、ヘブル書における「完全な救い」とは、大祭司キリストを通して「神に近づく」ことができることを意味します。しかも、臆することなく、責められることなく、大胆に、近づくことができるのです。神のふところへ引き寄せられること、そして主を知る者となる、ここに救いがあります。ヨハネはこれを「永遠のいのちを得る」と表現しました。
- もう一つ興味深いことは、最後の節(7節)に「主は道のほとりの流れから水を飲まれよう。それゆえ、その頭を高く上げられる。」とあります。原文には「主」という言葉はなく、「彼」となっています。その「彼」とは【主】(御父)から権威の杖を与えられた御子です。その御子が「道のほとりの流れから水を飲む」必要があるのです。この「水」とは御霊なる方のことだと信じます。なぜなら、ヨハネの福音書の中に「神がお遣わしになった方は、神のことばを話される。神が御霊を無限に与えられるからである。」(3章34節)とあるからです。御子の働きに寄添うようにしていつも御霊がおられました。それゆえ、詩篇110篇は、永遠のゆるがない愛によって存在している御父と御子、そして御霊なる神が密接なかかわりをもって存在しておられることを示唆していると言えます。このように、詩110篇には、ダビデの時代にはまだ完全な形では啓示されていない事柄が預言的に語られているのです。
- プロテスタント教会における聖書の読み方の特徴として、神のことばを、常に、自分に対して神が何を語っているかという構え方があります。しかし、いつもそのような主観的な読み方では客観的なことがらを理解することはできません。時には、自分への適応から離れて、客観的に見ることが必要です。
