恩寵用語Ps117
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詩117篇「大きくする」 גָּבַר ガーヴァル
〔カテゴリー統治〕
2節「その恵みは、私たちに大きく、主のまことはとこしえに至る。」 (新改訳)
2節「主の慈しみとまことはとこしえにわたしたちを超えて力強い。」(新共同訳)
2節「まことにかれの恵みはわれらを圧倒し、ヤーウェの真実はとこしえに」(岩波訳)
Keyword;「大きくする、圧倒する」rose, triumph, great, strength, 12:4/65:3/103:11/117:2
- 「大きく」と訳されたことばは形容詞ではなく「ガーヴァル」גָּבַר(gavar)という動詞です。旧約では25回、詩篇では4回使われています。その主な意味は「みなぎる」「増し加わる」増え続ける」という他に、「優勢になる」「圧倒する」「強くなる」「より勝る」「豊かである」という意味があります。後者の方が「ガーヴァル」גָּבַר(gavar)の特徴をよく表わしています。似た語彙に「ガーダル」גָּדַל(gadal)があります。これは神がアブラハムに語られたように「あなたの名を大いなるものとする」(to become great)とか、「主は王に救いを増し加える」(詩18篇50節)とあるように、数量的な成長や増加を意味します。しかしガーヴァルגָּבַרの方は、数量的ではなく、力、強さにおいて、力量的増強の意味で用いられます。
- イスラエルの民を導くモーセは、荒野でアマレクとの戦いを余儀なくされます。そのとき、モーセの持つ杖が高く掲げられている時には、イエスラエルは優勢となり、その杖が下がると今度はアマレクが優勢となったという話があります。後に、使徒パウロは、「罪の増し加わるところには、恵みも満ちあふれました。」(ロマ5:20~21)と述べていますが、私たちの罪がどんな増し加わっても、あるいはどんな弱くても、神の恵みはそれ以上に勝って、注がれることを意味しています。
- 詩117篇2節の「その恵みは、私たちに大きく」も、敵がどんな力強かったとしても、あるいは状況がどんな厳しいものであったとしても、主の恵みはそれをはるかに超えて、圧倒的に力強いことを意味します。ちなみに、この詩117篇は「エジプト・ハレル」といって、イエス・キリストとその弟子たちが最後の晩餐、ないしは、ゲッセマネの園に向かう時に歌われました。これからイエスが「引き渡され」「苦しめられ」「殺される」という十字架への道を進んで行かれる時に、この歌はどんなに励ましとなったことでしょうか。
- しかも、この詩117篇には「すべての国々よ、主をほめたたえよ」(1節)とあります。すべての「国々」(ゴーイムגוֹיִם)は異邦人とも訳されます。ユダヤ人のみならず異邦人も含んだ語彙です。ユダヤ人にとって4百年以上にもわたって異邦人に支配され、苦しませられたことで、異邦人が神に祝福されて賛美するということは考えられない状況でした。しかし神の救いの奥義は「ユダヤ人と異邦人とが共に共同の相続者となり、ともにひとつのからだに連なり、ともに約束にあずかる」ということでした。ですから、この歌を歌っていたイエスにとって、自分がこれから果たすべき目的がしっかりと意識されていたのです。