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差出人パウロの自己紹介

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No.2 差出人パウロの自己紹介

ベレーシート

  • まずは、聖書を読んでみましょう。

    【新改訳2017】ローマ人への手紙 1章1節
    キリスト・イエスのしもべ、神の福音のために選び出され、使徒として召されたパウロから。

    【新改訳改訂第3版】ローマ人への手紙 1章1節
    神の福音のために選び分けられ、使徒として召されたキリスト・イエスのしもべパウロ、

画像の説明
パウロス ドゥーロス クリストー イエースー、クレートス アポストロス アフォーリスメノス エイス ユーアンゲリオン セウー、

  • 1章1節に記されているパウロの自己紹介には、前置詞を除いて、次の8個の語彙(①「パウロ」②「イエス・キリスト」③「しもべ」④「神」⑤「福音」⑥「使徒」⑦「選び分けられた」⑧「召された」)が使われています。一つひとつの語彙を正しく理解することが大切ですが、人によって、簡単に理解できない語彙もあるかもしれません。たとえば、「福音」がそうです。まだ何も説明されていないのですから。2節からこの「福音」について説明がなされていきます。
  • 一般に、「福音」は「良い知らせ」「幸いなおとずれ」を意味します。誕生の知らせ、受験や就職の合格の知らせ、病気全快の知らせなどがそうです。いわゆる朗報と言われるものです。このローマ人への手紙は、「神の福音」という言葉で始まっています。それは神からの「良い知らせ」です。それはいったいどんな知らせなのでしょうか。そのことを注視しながら読み進めていきたいと思います。このローマ人への手紙のことを、「パウロの福音書」と呼んでいる人がいるほどです。
  • 1節から取り上げたいことは、パウロという人物です。彼は、神の福音のために「選び分けられ」、使徒として「召された」、キリスト・イエスの「しもべ」だという明確なアイデンティティをもっていたということです。パウロという人物を知るためにも、彼が自己紹介したことばには注目する価値があります。彼は自分で「キリスト・イエスのしもべ」だと言っていますが、それには、第一に、神の福音のために「選び分けられた」者だということと、使徒として「召された」者だという点です。そこに注目してみたいと思います。この二つは相補性をもった表現です。つまり、「選び分けられる」ことと「召される」(呼び出される)ことはコインの裏表の関係だということです。「選び分けられ」ているなら、必ず「召される(呼び出される)」のです。「召される」ということは、すでに神によって「選び分けられ」ていたことの表われなのです。この二つは切っても切れない密接な関係にあります。

1. 選び分けられた者

  • 「選び分けられ」た者にとって、自分が神の福音のために「取り分けられた」という意識が不可欠です。これはある目的のために、神によって選ばれ、区別され、取り分けられたという意識です。パウロはいつ選ばれたのでしょうか。

(1) ダマスコ途上で天からの光に照らされてから

  • パウロの人生は、ダマスコ途上で経験した出来事の前と後では、明確な区別があります。天からの強烈な光に照らされた彼は、目は開いていましたが、強烈な光を見た時のように、目が見えなくなっていました。三日間、パウロ(その時の名前は「サウロ」)は、飲み食いもせずに、自分に起こった出来事につい、て考える時が与えられたのです。そこにダマスコに住むアナニヤという弟子がやって来て、彼の上に手を置いて語りました。するとただちに、サウロの目からうろこのようなものが落ちて、目が見えるようになり、立ち上がることができたのです。アナニヤがサウロのために祈った時、おそらく主が語られた次のことばも話したのではないかと考えられます。
    「行きなさい。あの人(=サウロ)はわたしの名を、異邦人、王たち、イスラエルの子孫の前に運ぶ、わたしの選びの器です。」と(使徒9:15)。

(2) 母の胎にいるときから

  • しかし、パウロはダマスコ途上で経験した出来事で聞かされた「選びの器」だということについて、新たな視点を持ったようです。つまり、「私が選ばれていたのは、ダマスコの時ではなく、もっと前で、母の胎の中にいる時からだった」と気づかされたのです。

【新改訳2017】ガラテヤ人への手紙1章13~15節
13 ユダヤ教のうちにあった、かつての私の生き方を、あなたがたはすでに聞いています。私は激しく神の教会を迫害し、それを滅ぼそうとしました。
14 また私は、自分の同胞で同じ世代の多くの人に比べ、はるかにユダヤ教に進んでおり、先祖の伝承に人一倍熱心でした。
15 しかし、母の胎にあるときから私を選び出し、恵みをもって召してくださった神が、

【新改訳改訂第3版】ガラテヤ人への手紙1章13~15節
13 以前ユダヤ教徒であったころの私の行動は、あなたがたがすでに聞いているところです。私は激しく神の教会を迫害し、これを滅ぼそうとしました。
14 また私は、自分と同族で同年輩の多くの者たちに比べ、はるかにユダヤ教に進んでおり、先祖からの伝承に人一倍熱心でした。
15 けれども、生まれたときから私を選び分け、恵みをもって召してくださった・・・

(3) 天と地の基が置かれる(据えられる)前から

  • パウロという人は誰よりも神からの啓示を多く受けた人でした。長い間隠されていた「奥義」(神の秘密)も開示された人です。その彼は、神のご計画やみこころ、御旨と目的を深く瞑想して行くうちに、それらは天と地が創造される前から定められていたことだと悟ったのです。以下の箇所がそのことを語っています。

【新改訳2017】
エペ
1:3 私たちの主イエス・キリストの父である神がほめたたえられますように。神はキリストにあって、天上にあるすべての霊的祝福をもって私たちを祝福してくださいました。
1:4 すなわち神は、世界の基が据えられる前から、この方にあって私たちを選び、御前に聖なる、傷のない者にしようとされたのです。

【新改訳改訂第3版】エペソ人への手紙1章3~4節
3 私たちの主イエス・キリストの父なる神がほめたたえられますように。神はキリストにあって、天にあるすべての霊的祝福をもって私たちを祝福してくださいました。
4 すなわち、神は私たちを世界の基の置かれる前から彼にあって選び、御前で聖く、傷のない者にしようとされました。

  • エペソ人への手紙はパウロの殉教が迫っている中で、ローマの獄中から書かれた手紙(A.D.62年頃)ですが、ガラテヤ人への手紙は彼の働きの初期(A.D.48年)に記されたものです。その間、14年。啓示における漸次的深化があったようです。

2. 使徒として召された者

  • パウロはイェシュアから何度も自分の名を呼ばれています。名を呼ばれるということは、選ばれ、区別された者にしばしば起こります。しかも、必ず二度重ねで呼ばれています。たとえば、「モーセ、モーセ」(出3:4)、「サムエル、サムエル」(Ⅰサムエル3:10)、「シモン、シモン」(ルカ22:31)、「サウロ、サウロ」(使徒9:4,22:7,26:14)と、サウロの場合は三箇所に記されています。しかもギリシア名ではなく、ヘブル名で呼ばれています。ちなみに、「サウロ」のヘブル語表記は(שָׁאוּל)です。この語源は「シャーアル」(שָׁאַל)で、「神を尋ね求める」という意味があります。そのような意味を持つ名前で名指しで呼ばれたサウロが次のように述べています。

【新改訳2017】ガラテヤ人への手紙1章1節
人々から出たのではなく、人間を通してでもなく、イエス・キリストと、キリストを死者の中からよみがえらせた父なる神によって、使徒とされたパウロと、

【新改訳改訂第3版】ガラテヤ人への手紙1章1節
使徒となったパウロ──私が使徒となったのは、人間から出たことでなく、また人間の手を通したことでもなく、イエス・キリストと、キリストを死者の中からよみがえらせた父なる神によったのです──


【新改訳2017】Ⅰコリント人への手紙15章9~10節
15:9 私は使徒の中では最も小さい者であり、神の教会を迫害したのですから、使徒と呼ばれるに値しない者です。
15:10 ところが、神の恵みによって、私は今の私になりました。そして、私に対するこの神の恵みは無駄にはならず、私はほかのすべての使徒たちよりも多く働きました。働いたのは私ではなく、私とともにあった神の恵みなのですが。

  • パウロは自分が使徒として召されたことを確信しています。パウロの使徒性を最も疑ったのは、コリントの教会でした。使徒性が受け入れられなければ、権威をもって教会を指導することはできません。また、神の隠された奥義を伝えることもできません。それゆえ、パウロはとても苦しい思いをしたのです。ですから、パウロはどの手紙に対しても、自分が主によって召された者(実際に、主から名を呼ばれた者)であることを自己紹介の中に含ませる必要があったのです。ただし、人から認められても認められなくても、パウロが神から絶大な恵みを注がれた人物であり、多くの奥義が開かれた者であることを私たちは聖書を通して知ることができます。彼の使徒性は疑う余地もありません。もし、私たちが彼の手紙を読むことがないとしたら、神のご計画とその奥義を知らずにいることになるのです。私たちは今、このパウロから神の福音が何であるかを聞こうとしているのです。

2017.1.5


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