****** キリスト教会は、ヘブル的ルーツとつぎ合わされることで回復し、完成します。******

ユダ(イスラエルの残りの者)に対する回復の預言

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5. ユダ(イスラエルの残りの者)に対する回復の預言

【聖書箇所】 3章9節~13節

ベレーシート

  • 神のご計画は、決してさばきで終わるものではなく、新しい主の民をこの地に確立させるためのものです。3章9節以降にはその回復が記されています。今回は、9〜13節に記されている回復について限定したいと思います。特に、9節をどのように理解するかがとても重要と思われます。

1. 「くちびるを変えてきよくする」とは

  • 9節の諸訳を見てみましょう。

【新改訳改訂第3版】
そのとき、わたしは、国々の民のくちびるを変えてきよくする。彼らはみな【主】の御名によって祈り、一つになって主に仕える。


【口語訳】
その時わたしはもろもろの民に清きくちびるを与え、すべて彼らに主の名を呼ばせ、心を一つにして主に仕えさせる。


【新共同訳】
その後、わたしは諸国の民に/清い唇を与える。彼らは皆、主の名を唱え/一つとなって主に仕える。


【バルバロ訳】
そのとき、私の民(複数)に清いくちびるを与える。みなは主のみ名をこいねがい、肩を並べて主に仕える。


【NKJV】
"For then I will restore to the peoples a pure language,That they all may call on the name of the Lord,To serve Him with one accord.

ヘブル語原文
画像の説明

  • 「清いくちびる」を、NKJVは a pure language(純正な言語)と訳しています。「唇(くちびる)」と訳されたヘブル語「サーファー」(שָׂפָה)は「ことば、言語」とも訳されます。「純正な言語」を神が与えてくださることによって、はじめて諸国の民が一つになって主を礼拝し、仕えるようになるということを約束しておられます。しかしそれは「そのとき」という神のご計画における神の時(カイロス)に、それが神の主権によってなされるということです。
  • 諸国の民の言語を「純正な言語」に変えるとはどういうことなのでしょうか。「きよくする」の「する」と訳されたヘブル語は「ハーファフ」(הָפַךְ)ですが、その意味は「覆す、ひっくり返す」という意味です。諸国の言語をきよくする、それを純化させるために神が言語をひっくり返すとはどういうことなのでしょうか。しかもそのことによって、諸国の民が初めて一つとなって(肩を並べて)、主に仕えることができるのです。そのことを理解するためには、「くちびる、言葉、言語」と訳された「サーファー」(שָׂפָה)について知る必要があります。このことばの初出箇所は創世記11章(1, 6, 7, 7, 9節)です。

2. バベルの塔の建設の出来事

  • 創世記11章1~9節には「バベルの塔」を築こうとして、神がそれを頓挫させた出来事が記されています。

【新改訳改訂第3版】創世記11章1~9節
1 さて、全地は一つのことば、一つの話しことばであった
2 そのころ、人々は東のほうから移動して来て、シヌアルの地に平地を見つけ、そこに定住した。
3 彼らは互いに言った。「さあ、れんがを作ってよく焼こう。」彼らは石の代わりにれんがを用い、粘土の代わりに瀝青を用いた。
4 そのうちに彼らは言うようになった。「さあ、われわれは町を建て、頂が天に届く塔を建て、名をあげよう。われわれが全地に散らされるといけないから。
5 そのとき【主】は人間の建てた町と塔をご覧になるために降りて来られた。
6 【主】は仰せになった。「彼らがみな、一つの民、一つのことばで、このようなことをし始めたのなら、今や彼らがしようと思うことで、とどめられることはない。
7 さあ、降りて行って、そこでの彼らのことばを混乱させ、彼らが互いにことばが通じないようにしよう。
8 こうして【主】は人々を、そこから地の全面に散らされたので、彼らはその町を建てるのをやめた。
9 それゆえ、その町の名はバベルと呼ばれた。【主】が全地のことばをそこで混乱させたから、すなわち、【主】が人々をそこから地の全面に散らしたからである。

  • 洪水の後、ノアとその家族からはじまった新しい時代において、言語は当然一つでした。その流れがバベルの塔の出来事の後から変わります。つまり、「一つのことば」「一つの話しことば」ではなくなったのです。今日、世界に多くの言語があるのはそのためです。
  • 「一つのことば」を持つということが大きな力を持つことであると、神である主は知っておられました。もし「一つのことば」をもった神に背く者たちが、神なき世界を造ろうとして集まり、自分たちの名を上げようと、しかも「一つところ」に集結したならば、とどまるところ知らず状態になることを神は懸念し、それを頓挫させるために、「ことば」を混乱させ、全地に散らされました。これが「バベル」(בַּבֶל)の出来事です。
  • 「ことばを混乱させる」とは、コミュニケーションが取れなくなってしまうことを意味します。つまり同じ言語でも異なる概念を持つようになれば、コミュニケーションが取れなくなるのです。たとえば、日本人が持つ「神」という概念と、聖書の「神」の概念は全く異なります。「神」という言語表現は同じでも、その意味するところ(概念)が異なるなら、同一(共通)の理解をすることは不可能です。このように人本主義(ヘレニズム)の概念をもった言語と神中心(ヘブライニズム)の概念の言語では、根本から異なるのです。
  • 神のご計画において、諸国の民や神の「残りの者」たちが神に立ち返り、ひとつとなって神を礼拝し、神に仕えるようになるためには同じ概念を持つ言語の理解が必要なのです。「そのとき」、つまり、神の定めの時(カイロス)においてそのことがなされなければなりません。
  • 実に、イスラエルの建国の奇蹟において、このことがなされました。使われなくなって二千年近く経つヘブル語を神が復興させたからです。このヘブル語は神の概念を正しく理解する上で非常に重要な言語なのです。それは神がご自身を啓示する上で、またそのご計画を知らせるために、神ご自身が選ばれた「純正な言語」であると信じます。そして何よりもそれは、御子イェシュアについてあかしすることにおいて「純正な言語」だということです。
「バル」の二根字.JPG
  • 「きよい」と訳されたヘブル語は「バーラル」(בָּרַר)の受動態分詞形で形容詞的に使われていますが、この「バーラル」は二根字弱動詞です。ここでの二根字動詞とは「ベート」(ב)と「レーシュ」(ר)から成っています。この二根字動詞の場合、それに「アーレフ」(א)、「ヴァーヴ」(ו)、「へー」(ה)、「ヨード」(י)を付け足して動詞が造られますが、二根字の後に来る文字をさらに重ねることでもできます。「バーラル」(בָּרַר)がその例です。右図は二根字〔בּר〕から派生する三つの動詞です。二根字の〔בּר〕がそもそも「息子」(御子)を表わす語彙です。

    (1) 「バーラル」(בָּרַר)は「きよくする、純化する、輝かす」の意味。
    (2) 「バーラー」(בָּרָא)は「創造する」の意味(神の行為に使われます)。
    (3) 「バーラー」(בָּרָה)は「食べる、選ぶ」の意味(人の行為に使われます)。

  • 総括すると、神が諸国の民の言語を、再び、純化された神の概念を持つ言語として復興させ、人々がそれを食べる(理解する)ことを通して、神の前に一つの民としていくという主権的な意味合いを持っていると考えられます。だとするならば、私たちは神がイスラエルの建国を通して復興してくださったヘブル語を、神を理解する「純正な言語」として受け入れる必要があると思います。

3. 神によって新しく創造された民

【新改訳改訂第3版】ゼパニヤ書3章12~13節
12 わたしは、あなたのうちに、へりくだった、寄るべのない民を残す。彼らはただ【主】の御名に身を避ける。
13 イスラエルの残りの者は不正を行わず、偽りを言わない。彼らの口の中には欺きの舌はない。まことに彼らは草を食べて伏す。彼らを脅かす者はない。

  • 11節の「その日には」」、「わたしは、あなたのうちに、へりくだった、寄るべのない民を残す。」と主は約束しています。「残す」(12節)、「残りの民」(13節)にあるように、「残りの者」(「シェエーリート」שְׁאֵרִית)は旧約において重要な思想です。と同時に、13~15節の各節に「イスラエル」という言葉が出てきます。すでに2章9節でも登場していますが、そこでは諸国民との関連で使われていますが、3章13~15節の「イスラエル」は、神が選ばれた民という意味で用いられているように思われます。ゼパニヤ書はユダの民に語られていますが、神のご計画における「終わりの日」(「その日には」)の預言の範疇は、ユダのみならず、エフライム(北イスラエル)の存在なしには意味がありません。神のみこころは「イスラエルの家とユダの家」とに対するものだからです(たとえば、エレミヤ書31:31参照)。それゆえ、「イスラエルの残りの者」とは、ユダとエフライムにおける「残りの者」ということになるのです。

付記

「なぜ私たちはヘブル語を学ぶ必要があるのか」を参照のこと。


2015.7.3.


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