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モアブに対する主の嘆きの歌

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13. モアブに対する主の嘆きの歌

【聖書箇所】15章1節~16章14節

ベレーシート

  • イザヤ書15章と16章は、モアブに対する主のさばきの預言とそれを嘆く主の姿が記されています。15章はモアブに対するさばきの宣告が記されていますが、16章はそのさばきの宣告の理由について記されています。
  • イザヤの時代には北からはアッシリヤと勢力が起こり、南にはエジプトという勢力があり、その間に挟まれた中東の国々がその二つの巨大な勢力の間で揺れ動く時代でした。親アッシリヤ政策と反アッシリヤ政策とに分かれ、どちらにつくことが自分たちが生き残る道かを巡って右往左往していたのです。しかし、ユダに対する預言者イザヤは一貫して、「静まれ」と語り、親アッシリヤでもなく、反アッシリヤでもなく、主なる神にのみ信頼するようにと語り続けた預言者でした。それはユダの人々にとって「心をかたくなにする」メッセージだったのです。
  • モアブは死海東岸の国であり、歴史を遡れば、アブラハムの甥ロトの子孫であり、ユダとも血縁関係にある国です。特にダビデの王家にとってはその先祖にモアブ出身のルツがいます。それゆえ、ユダ王国とモアブは縁の深い関係にありました。

1. モアブに対する主の宣告

  • モアブに対する預言は、エレミヤ書48章、ゼパニヤ書2章8~11節、エゼキエル書25章8~11節、アモス書2章1~3節、ダニエル書11章41節にも記されていますが、モアブの国としての勢力は、すでにB.C.701年のアッシリヤのセナケリブによる侵略で喪失しています。
モアブの地図.JPG
  • ペリシテ、エドムの国と反アッシリヤ同盟を結んだモアブに対して、主は滅びの宣告をします。15章1節に「一夜のうちに、アルは荒らされ」、「一夜のうちに、キル・モアブは荒らされ」て、「モアブは滅び失せた」とあります。「荒らされる」(「シャーダド」שָׁדַד)とは「略奪される」ことです。それと「滅びる」(「ダーマー」דָּמָה)も預言的完了形(受動)が使われています。「アル」は北部にあるモアブの首都です。「キル・モアブ」の「キル」(「キール」קִיר)は城壁を意味します。つまり、そこが破られればモアブは持たないということです。アッシリヤの勢力に押されてどんどん南下することを余儀なくされます。
  • 20ほどの町の名前が登場していますが、その中で最も南にあるのが「セラ」で死海から南方50kmほどにある場所です。しかしそこはエドムの首都です。「セラ」はギリシア名では「ペトラ」です。「岩の崖」という意味で、そこは自然の要塞都市でした。

2. 主のモアブに対する忠告

  • 16章1~5節には、モアブに対するさばきの宣告ではなく、ユダに対する主の忠告が記されています。

【新改訳改訂第3版】イザヤ書16章1節、
1 子羊を、この国の支配者に送れ。セラから荒野を経てシオンの娘の山に。
3 助言を与え、事を決めよ。昼のさなかにも、あなたの影を夜のようにせよ。散らされた者をかくまい、のがれて来る者を渡すな。
4 あなたの中に、モアブの散らされた者を宿らせ、荒らす者からのがれて来る者の隠れ家となれ。しいたげる者が死に、破壊も終わり、踏みつける者が地から消えうせるとき、
5 一つの王座が恵みによって堅く立てられ、さばきをなし、公正を求め、正義をすみやかに行う者が、ダビデの天幕で、真実をもって、そこにすわる。

  • 1節の「子羊」とはモアブのことを意味します。なぜなら、モアブは牧畜の国であったからです。
  • 3, 4節の「あなた」はユダのことで、「モアブの散らされた者を宿らせ、荒らす者からのがれて来る者の隠れ家とな」るように忠告されています。神はモアブの難民を神が支配されるシオンの避難所に導きたい思っているのです。
  • 5節では、そこはやがて将来において「ダビデの天幕」が復興され、一つの王座が恵みによって堅く立てられる場所であることが預言されています。

3. 神のモアブに対する嘆き

  • ところがモアブの民は「高ぶり」、神の忠告を無視して、悔い改めることなく、偶像の神に必死になって祈ったのです(16:6)。それゆえ、「モアブは、モアブ自身のために泣きわめく。みなが泣きわめく。あなたがたは打ちのめされて、・・・嘆く」ようになるのです(16:7)。
  • 神の本音としてはモアブを滅ぼしたくはないのですが、正義の神としてはそうはいかないのです。そこに神の嘆きがあります。そのことが11節に記されています。

    それゆえ、わたしのはらわたはモアブのために、
    わたしの内臓はキル・ヘレスのために、立琴のようにわななく。

  • 「キル・ヘルス」とは「キル・モアブ」の別名です。また、「はらわた」(「メーアイム」מֵעַיִם)も「内臓」(「ケレヴ」קֶרֶב)も同義です。特に、「ケレヴ」は「胸、心の中、内部」を意味し、そこが「わななく」のです。「わななく」と訳されたヘブル語は「ハーマー」(הָמָה)で、イザヤ書ではこの16章11節が最初で、17:12, 12/22:2/51:15/59:11でも使われています。つまり、17章11節では、神(あるいは預言者イザヤという解釈もあります)が、モアブを思う深い感情、魂を動かされるような同情・あわれみを表わしているのです。

4. 雇い人の年期のように、三年のうちに

  • モアブの上に起こる災いは、明確に、「三年のうちに」実現することが宣告されています。人が雇われる時に、その期間は主人との約束で定められるように、モアブに対する預言は正確に成就することを表わしています。はっきりしない預言ではなく、正確な預言の実現を告げているのです。
  • 聖書における預言は、それが実現してみなければ本当のところは分からないという面が確かにありますが、主の預言の性格さはイザヤ書14章24節にもはっきりと示されています。

    万軍の【主】は誓って仰せられた。
    必ず、わたしの考えたとおりに事は成り、
    わたしの計ったとおりに成就する。


2014.8.20


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