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ミグダル・エデル

「ミグダル・エデル」

●羊飼いたちー「ミグダル・エデル」(羊の群れの塔)

  • ルカの福音書によれば、イェシュアの誕生のニュースを最初に知らされたのは羊飼いでした。彼らは急いでベツレヘムに行って生まれたばかりのイェシュアを見たのです。世界ではじめのクリスマスですが、ここで登場する羊飼いたちの存在に神の秘密が隠されています。
  • ルカは2:8で「さて、この土地に、羊飼いたちが、野宿で夜番をしながら羊の群れを見守っていた」と記しています。「この土地」とはいったいどんな土地なのでしょうか。どこの場所なのでしょうか。御使いの知らせを聞いた羊飼いたちは2:15で「さあ、ベツレヘムに行って、・・この出来事を見て来よう。」と言っていますから、「この土地」というのはベツレヘムではないことが分かります。かといって、「急いで行って、・・捜し当てた」とありますから、それほど遠く離れてはいない場所です。そもそも、羊飼いたちはどこにいたのでしょうか。これまでにそのようなことを私は考えたことがありませんでした。しかし、小さなことにこだわると、不思議と神の隠された秘密が見えてくるのです。

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  • 創世記35章21(16~21)節に「ミグダル・エデル」(羊の群れの塔) と呼ばれるところがあります。「ミグダル」は「塔、やぐら、とりで」を意味し、「エデル」は「家畜や羊の群れ」を意味します。つまり、「ミグダル・エデル」とは「羊などの群れを管理する塔」のことです(写真参照)。ミグダル・エデルのあるこの地域(ベツレヘムの辺り)は、約束の地として与えられる前のヤコブの時代から、羊の世話をする場所として知られていたのです。救い主がお生まれになるという預言が与えられる前から、ベツレへムは特別な場所として、神が確保されていた所なのです。
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  • やがてイスラエルでは約束の地で、幕屋や神殿で用いられるいけにえがささげられますが、そのいけにえとなる羊は「傷のない羊」でなければなりませんでした。つまり、品質の良い、良く管理されて育てられた最高の羊が必要とされました。そうした羊を育てる場所がベツレヘム近郊にあったのです。「ミグダル・エデル」はそのようないけにえとなる羊の重要な供給所だったのです。
  • ユダヤ人で新約学者であるイーダーシャイム(Alfred Edersheim)という人は「イエスの生涯と時代」(The Life and Times of Jesus the Messiah )という本の中で(かなり古い本で出版されたのは1890年頃。英語版入手可能)、ベツレヘム郊外にあるミグダル・エデル(見張りの塔)の傍の羊の群れは、普通の群ではなくて、エルサレムの神殿に捧げるための特別な群れであること、羊飼いたちも特別な使命のための人々で、しかも、年間休み無く羊を見守っていたことを指摘しています。また、普通の羊飼いは、夕方になると羊を囲いの中に入れて、自分たちは天幕の中で寝てしまうのが普通でした。夜に焚き火を焚きながら、野宿してまで羊を見守るということは尋常なことではなく、むしろ特別なことであったようです。「傷のない羊」を育てるために、品質管理を何よりも自分たちの使命とする忠実な羊飼いだったからこそ、「野宿で夜番をしながら羊の群れを見守って」(2:8)いることができたのです。
  • ちなみに、中世から20世紀の第2バチカン公会議にいたるまでカトリック教会のスタンダードであり続けた「ウルガータ」訳全聖書を翻訳したのはヒエロニスムという人です。彼は居をベツレヘムに移して、そこで翻訳の仕事を完成させたと言われていますが、彼もイーダーシャイムと同じようなことをすでに語っていたと言われます。ちなみに、ヒエロニムスは420年にベツレヘムで没しています。
  • ベツレヘム近郊にある「ミグダル・エデル」にいる羊飼いたちのところに現われたのです。「恐れることはありません。今、私はこの民全体のためのすばらしい喜びを知らせに来たのです。きょうダビデの町で、あなたがたのために、救い主がお生まれになりました。この方こそ主キリストです。あなたがたは、布にくるまって飼葉おけに寝ておられるみどりごを見つけます。これが、あなたがたのためのしるしです。」(2:11)。 この知らせを聞いた羊飼いたちは、急いでベツレヘムに行き、自分たちをはるかに越えた偉大な羊飼い(大牧者であるメシア)となる方と対面したのです。しかもその方は、やがて人類の罪の身代わりのいけにえとなるべき「傷なき小羊」でした。「ミグダル・エデル」にいた彼らが、ベツレヘムで真っ先に、まことの大牧者であり、しかも同時に「傷なき小羊」として死なれる幼子イェシュアを礼拝したことは、神の救いのドラマにおける驚くべき啓示だったと言えます。
  • イスラエルにおいては、羊飼いは必ずしも身分の低い見下げられた職業ではありません。イスラエルの歴史おいて登場する人物はみなすばらしい羊飼いでした。アベル、アブラハム、イサク、ヤコブ、モーセ、ダビデなど、彼らはまさに羊飼いであり、人々から尊敬されていた指導者でもありました。良い羊を育てることは、良い羊飼いしかできません。「ミグダル・エデル」の羊飼いたちが、やがて真の良い羊飼いとなるイェシュアとベツレヘムにおいて合流しているのは神のドラマにおけるすばらしい啓示です。それに加えて重要なことは、そのベツレヘムがイスラエルの王となったダビデの登場する町だったということです。

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