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ダニエルの見た第一の幻 「四つの獣と天の御座」

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8. ダニエルの見た第一の幻 「四つの獣と天の御座」

【聖書箇所】7章1節~28節

ベレーシート

  • 7章からダニエル書の後半部分となります。前半の1~6章は主にストーリーが記されていましたが、7章以降の後半の内容は預言が記されています。とりわけ、7章にあるダニエルの見た幻はとても重要です。この幻の意味するところをダニエル自身解き明かすことができませんでした。2章ではだれも解き明かすことのできなかったネブカデネザル王の夢を解き明かすことができたのはダニエルだけでした。そのダニエルが7章にある自分の見た夢と幻を解き明かすことができなかったのです。そのため、ダニエルがすっかり混乱し、動揺したのもうなずけます。
  • ダニエルが見た幻はネブカデネザルが見た大きな像の夢(2章)の拡大版であり、その夢には啓示されなかった新しい真理が、7章の四つの幻に加えられています。

1. ダニエルの見た幻は「四つの獣」

  • ネブカデネザルが見た夢は、人間的な視点から見た巨大な像で人間的に力を誇示したものですが、神の視点から見るなら、ダニエルが見たようなおぞましい獣の姿なのです。
四つの獣 (1)(2).JPG

第一の獣(7:4)は、「獅子」のようで、「鷲」の翼をつけています。獅子は百獣の王であり、バビロン帝国の偉大さを物語っています。「鷲」の翼については、「その翼は抜き取られ、地から起こされ、人間のように二本の足で立たされて、人間の心が与えられた」とあるように、これはネブカデネザ王の身に起こった「七つの時」(ダニエル4章にある精神異常とそこからのいやし)のことを指しています。

第二の獣(7:5)は、「突然」に現われるとあるように、事実、この預言通りにバビロンの崩壊がベルシャツァル王の時世に、メディヤ・ペルシアによる不意の侵入によってもたらされました。この獣は「熊」に似ており、「横ざまに寝ていて」とありますが、それは左右のバランスが取れていないためです。つまりメディヤに対するペルシアの優勢を表わしています。その口にある「三本の肋骨」は、メディヤ・ペルシア軍によって征服されたバビロン、リビヤ、エジプトを象徴しています。またそれに「多くの肉をくらえ」との声がかかっています。実際には、メディヤ・ぺルシア帝国は百以上の州を支配する国となりました。

第三の獣(7:6)も、突然現われ、「ひょう(豹)」のような獣で、背には四つの翼と四つの頭がありました。豹は動物の中でも非常に巧妙で迅速です。豹と預言されたのはギリシアのアレクサンドロス大王とその世界征服です。彼は22歳という若さで軍を率い、近隣諸国を次々と征服し、ついにインドにまで征服しました。しかし33歳で急死しました。

四つの獣 (3)(4).JPG

豹の持つ「四つの翼」と「四つの頭」は、大王の死後にギリシア王国が四つに分裂し、四つの王朝となることの預言です。ギリシア帝国は、四人の将軍を長に四分され、エジプトのプトレマイオス王朝、シリヤのセレウコス王朝、マケドニヤのアンティオゴノス王朝、小アジアのフィレタエルス王朝がそれぞれ築き上げられました。

第四の獣(7:7~8)は、「恐ろしく、ものすごく、非常に強くて、大きな鉄のきばを持っており、食らって、かみ砕いて、その残りを足で踏みつけた。これは前に現われたすべての獣と異なり、十本の角を持っていた」とあります。この獣は、それまでに類のない強力な軍事力で、他のすべての国々を打ち砕くローマ帝国の出現を預言するものでした。ダニエル書2章の強大な像では二本のすねに相当する部分です。「すね」が二本あるように、ローマ帝国はやがて東と西とに分かれます。また、10本の角は、最終的には、終わりの日に台頭する世界帝国の予表です。第四の獣が持つ10本の角は、2章の大きな像の「10の足の指」に相当する預言として解釈することができます。

  • 「10本の足の指」、あるいは「10本の角」は、ある種の同盟によって結ばれた王たちを象徴しています。彼らは一つになって神と神の民に敵対します。10人の王が結ぶ同盟は「もう1本の小さな角」によってかき乱され、「初めの角のうち3本」が引き抜かれることになります。「小さな角」は「不法の人」を象徴していますが、彼の出現によって、それまで暗黒の同盟を結んでいた10人の王のうちの3人が彼の意向にそわないという理由で除去されると考えられます。
  • この小さな角こそ「不法の人」(反キリスト)を指すことは、次の表現からも明らかです。「よく見ると、この角には、人間のような目があり、大きなことを語る口があった。」(ダニ7:8) この角にある大言壮語する口は、「不法の人」の大きな特徴です。「不法の人」の敵意は二つの方向に向けられます。その一つは神に対して、もう一つは聖徒に対してです。ダニエルに与えられた夢の解釈では、「一本の角」の敵意は聖徒に向けられています。「私が見ていると、その角は、聖手たちに戦いをいどんで、彼らに打ち勝った。」(7:21)。つまり、天上にある目に見えない神への敵意が、地上にある目に見える聖徒への敵意として表明されるのです。ただし、ここでの「聖徒たち」とはイスラエルの民のことを意味します。なぜなら、海から上がって来る四つの獣はすべてイスラエルの民と関連しているからです。
  • 一本の小さな「その角は、聖徒たちに戦いに戦いをいどんで、彼らに打ち勝った」(7:21)とありますが、それは、「年を経た方が来られるまでのことであって、いと高き聖徒たちのために、さばきが行われ、聖徒たちが国を受け継ぐ時が来」るときまでです(7:22)。

2. 大きな白い御座

【新改訳改訂第3版】ダニエル書 7章9~10節

09 私が見ていると、幾つかの御座が備えられ、年を経た方が座に着かれた。その衣は雪のように白く、頭の毛は混じりけのない羊の毛のようであった。御座は火の炎、その車輪は燃える火で、
10 火の流れがこの方の前から流れ出ていた。幾千のものがこの方に仕え、幾万のものがその前に立っていた。さばく方が座に着き、幾つかの文書が開かれた。

  • 7章9~10節に記されていることばの意味は次のようです。
    (1)「年を経た方」とは、年のことではなく、永遠に存在される方、ここでは御父を意味しています。英語ではAncient of Days と訳されています。
    (2)「その衣は雪のように白く」の「白く」とは、色のことではなく、聖さを表わしています。
    (3)「頭の毛は混じり毛のない羊の毛のよう」とは、白髪のことではなく、知恵と知識に満ちた裁判官の姿です。ダニエルが見ている座とは裁判の座です。
    (4) 「御座は火の炎、その車輪は燃える火」とは、エゼキエル書1章にもあるように、神の臨在を表わすシャハイナ・グローリーのことです。
    (5)「火の流れがこの方の前から流れ出ていた」とは、神のさばきを意味しています。つまり、さばきの時が来たことを意味しています。
    (6)「さばく方が座に着き、いくつかの文書が開かれた」とは、四つの獣がいよいよさばかれる時が来たことを意味しています。
  • つまり、ダニエルが見た天上の御座のヴィジョンは、すべての悪に対する制裁が下されることを預言しています。これはヨハネが見た黙示録による啓示と見事に一致しています。そこでは「年を経た方」ではなく、その方からさばきの全権をゆだねられた「人の子のような方」の姿があります。

    ●ヨハネの黙示録1章14節
    その頭と髪の毛は、白い羊毛のように、また雪のように白く、その目は、燃える炎のようであった。

    ●ヨハネの黙示録20章11~12節
    11 また私は、大きな白い御座と、そこに着座しておられる方を見た。地も天もその御前から逃げ去って、あとかたもなくなった。
    12 また私は、死んだ人々が、大きい者も、小さい者も御座の前に立っているのを見た。そして、数々の書物が開かれた。また、別の一つの書物も開かれたが、それは、いのちの書であった。死んだ人々は、これらの書物に書きしるされているところに従って、自分の行いに応じてさばかれた。

  • ダニエルの見た幻のクライマックスは、主イエスの再臨です。悪魔の荒れ狂う世界という舞台に現れて、悪魔を滅ぼし、義と平和をもって治める「王の王、主の主」の出現というすばらしい幻であり、主権者なる主イエス・キリストの啓示です。

見よ。人の子のような方が雲に乗って来られ、年を経た方のもとに進み、その前に導かれた。この方に、主権と光栄と国が与えられ、諸民、諸国、諸国語の者たちがことごとく、彼に仕えることになった。その主権は永遠の主権で、過ぎ去ることがなく、その国は滅びることがない。(ダニエル7:13~14)

  • この「人の子のような方」によるさばきが行われることによって、はじめて「国と、主権と、天下の国々の権威とは、いと高き方の聖徒である民に与えられる。その御国は永遠の国、すべての主権は彼らに仕え、服従する。」と記されています(ダニエル7:27)。つまり、神の民イスラエルは千年王国においては、世界の支配国となることが預言されているのです。


2013.8.20


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