****** 教会は、ヘブル的ルーツとつぎ合わされることで回復し、完成します。******

「へブル人の中のへブル人」という表題について


1.「へブル人の中のへブル人」という表題について

「へブル人の中のへブル人」
「イヴリー・ミン・ハーイヴリーム」עִבְרִי מִן הָעִבְרִים)と称した使徒パウロ、これこそパウロ自身のアイデンティティーを表現したものは他にないと言えます。この表現はパウロが晩年にローマの獄中で書かれた書簡である「ピリピ人への手紙」の中にある言葉ですが、実はそのことが重要なのです。「へブル人の中のへブル人」はここ一回限りですが、彼が回心した32年頃からローマの獄中にいた61~66年までの約30年間にわたって、神から啓示された事柄をへブル的思考によって言い表わしたものであることを自負したものだと考えられます。パウロの神学的思考は決してギリシア的(ヘレニズム)ではなく、あくまでもユダヤ的ルーツ(ヘブライズム=唯一神的信仰)が前提になっていることを宣言する表現だと思われます。

●これはパウロが単にユダヤ人として生まれたこと、そのしるしである割礼を受けたこと、自分がイスラエルの民のベニヤミン族に属するものであること、そして厳格なパリサイ人に属するといういわば外面的ものではありません。もしそうだとしたら、「ヘブル語を話すユダヤ人」という意味での「へブル人」だけで良いはずです。しかしパウロは自分のことを「へブル人の中のへブル人」と明言しています。彼はタルソで生まれ、ヘレニズム的環境の中で育ちながらも、その霊性はへブル人の信仰と伝統に立つ内面的アイデンティティーを持って生きてきたことを意味しています。ちなみに、新改訳2017は「へブル人の中のへブル人」ですが、新改訳改定第三版まで「きっすいのへブル人」という訳になっていました。パウロという人は、ヘレニストの着物を着ながら、その中身は、純粋なへブル的精神を持った真のユダヤ人であったということです。

●聖書で初めて「へブル人」という語彙が出てくるのは創世記14章13節で、アブラハムに対して言われた言葉です。それは「河を渡ってきた者」という意味です。事実、アブラハムはユーフラテス川を渡ってカナンの地にやってきた者です。しかしこの「へブル人」の根拠はアブラハムのはるか以前にまでさかのぼります。それは、ノアの系図を引き続いだセムの子の一人、「エベルのすべての子孫の先祖」とあります(創世記10章21節)。この「エベル」から「へブル」という語が生れています。エベル(「エーヴェル」עֵבֶר)もへブル(「イヴリー」עִבְרִי)も、原語は同じ語幹(עבר)です。「エベル」には二人の息子「ぺルグ」と「ヨクタン」が生まれますが、彼らのうち、「ペルグ」の子孫がアブラハムなのです。神の祝福を受けたアダムの子「セツ」「エノシュ」「ノア」「セム」「エベル」の系列こそ「へブル人」であり、主なる神の唯一神的信仰のルーツなのです。「へブル人の中のへブル人、パウロ」も系列を同じくするものだということです。パウロはヘブル語を自由に語ることができた(使徒21:40,22:3)だけでなく、彼のすべての思考や悟りがユダヤ的ルーツ(ヘブライズム)に深く根差した結晶なのです。パウロはそれを異邦人(ヘレニズム)の世界に対して伝えるべく選ばれた使徒だったのです。その彼がこう言っています。

【新改訳2017】ローマ人への手紙 3章29節
・・・神はユダヤ人だけの神でしょうか。異邦人の神でもあるのではないでしょうか。そうです。異邦人の神でもあります。


「へブル人の神、主」という呼び名について

アドナイ・エローへ―・ハーイヴリッイーム
(יהוה אֱלֹהֵי הָעִבְרִיִּים)

●この呼び名は出エジプト記に6回出てきます。その箇所は、3章18節、5章3節、7章16節、9章1、13節、10章3節です。これらはすべて、ファラオ(パロ)との談判の場面で、モーセが言った神の呼び名です。そこには解放を意味する「去らせる」(「シャーラハ」שָׁלַחの強意形)という表現が神と共に用いられています(3:20, 5:1,2, 7:14, 9:1,2, 10:3,4)。つまり、「へブル人の神、主」とは、エジプトにおいて隷属、抑圧、疎外、差別に苦しむへブル人を、そこから解放してくださる神の名前なのです。この神がやがて「イスラエルの神、主」と呼ばれるようになるのです。

●イスラエルに接ぎ木された教会は、「父と子と御霊なる神」という三位一体の神を告白する以前に、「へブル人の神、主」、「イスラエルの神、主」と告白すべきなのです。そのような告白がなされるときに、教会はへブル的ルーツを自覚することができ、パウロと同様の「唯一神的信仰と希望に生きることができる」のです。


2018.12.25

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